中国空母、警戒要する遠洋展開能力向上


 中国海軍の空母「遼寧」が率いる艦隊が西太平洋を経由し、南シナ海を航行した。遼寧の太平洋進出は初めてである。

 中国国防省は活動の目的が「遠洋訓練」だと公表しているが、要警戒である。

 初めて太平洋に進出

 中国は九州南方から沖縄、台湾を結ぶ線を防衛ラインの「第1列島線」とし、伊豆諸島からグアムに至る線を「第2列島線」としている。今回の空母艦隊の動きは「第1列島線」を越えて「第2列島線」まで制空・制海権を確保することを狙ったものであり、日米両国は警戒を強める必要がある。

 この動きは、中国海軍が従来の「近海防御型」から「遠海護衛型」へと脱皮したことを象徴するもので、日本への脅威が一段と高まったことを意味する。さらに、来年1月の米大統領就任を前にトランプ氏を牽制(けんせい)する狙いが考えられる。

 トランプ氏は中国を「為替操作国」と批判し、中国が何よりも重視する「一つの中国」の原則に疑問を示してきた。今月初めには、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国側をいら立たせていた。米大統領や大統領選の当選者が台湾トップと会談したのは、1979年の断交以降初めてである。

 今回の空母艦隊の動きには、中国が自国海軍の遠洋展開能力を誇示することで、トランプ氏や「一つの中国」を認めない台湾政権を揺さぶる意図が見て取れる。

 南シナ海では今月15日、米海軍の無人潜水機が中国海軍艦艇に奪われる事件が発生した。空母艦隊の航行はそれに続くものだ。中国軍機が台湾を一周するように飛行する事態も相次いでいる。遼寧が台湾の東側海域に展開すれば、台湾は東西から中国軍に挟まれる形となり、脅威が一段と高まることになる。

 中国戦艦による太平洋進出は年々増加しており、2008年には2回だったが、昨年は8回、今年は今回の空母艦隊の前に過去最多の10回に達していた。空母が加われば、中国は西太平洋海域で航空戦力を速やかに展開できるようになる。

 中国は台湾海峡での有事の際に、米空母機動部隊を寄せ付けないようにする「接近拒否戦略」を掲げている。13年10月には、北海艦隊、東海艦隊、南海艦隊の三つの艦隊が「第1列島線」の東側に初めて同時に出て、実戦形式の演習を行った。中国軍機が宮古海峡などの上空を通過して西太平洋に出る訓練も頻繁に実施し、参加する機種や飛行パターンも増えている。

 今月に入ってからは、遼寧が渤海から黄海、東シナ海にかけての海域で総合的な訓練を行っている。その際、艦載機の「殲15」がミサイルを発射する模様を初公開し、中国海軍の戦闘能力を世界に誇示した。

 日米両国は早急な対応を

 さらに注意しなければならないのは、中国の空母建造計画だ。遼寧省・大連で建造中の初の国産空母が近く進水するとみられている。

 上海近郊で国産2隻目の空母も建造中とされ、25年には三つの空母打撃群を保有するとの見方もある。日米両国は早急な対応が必要だ。