トランプ氏、アジア太平洋に戦略的関与を


 トランプ次期米大統領は台湾の蔡英文総統と異例の電話会談を行うなど「一つの中国」の原則に縛られる必要がないとの見方を示している。

 「一つの中国」に縛られず

 米大統領や大統領選の当選者が台湾トップと会談したのは、1979年以来初めてである。当時のカーター大統領が台湾との国交を断絶し、北京の共産党政府を中国として認めた79年の米中国交樹立以来、両国の間では中国本土と台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」の原則が保持されてきた。

 その意味で、トランプ氏が今月初め、蔡氏に「プレジデント(総統)」と呼び掛けて行った電話会談は歴史的なことである。両氏は「経済、政治、安全保障での緊密な関係が台湾と米国の間にある」と確認し合ったとされる。

 中国当局は今年6月に「一つの中国」原則に基づく「92年合意」の受け入れを拒む蔡政権との公式対話停止を表明した。対中政策が手詰まり状態にある中、蔡氏にとっても最大の後ろ盾である米国の次期大統領と直接対話できた意義は大きいと言えよう。

 さらに、トランプ氏はFOXテレビのインタビューで「一つの中国」原則を維持するかどうかは、中国次第だとの考えを表明。これに対し、中国外務省の耿爽・副報道局長は「深刻な懸念」を表明した上で、同原則の堅持が「中米関係発展の政治的土台だ」と述べた。

 もちろん、これだけで米国の対台湾政策が変化するかどうかは分からない。ただ、トランプ氏の外交・安全保障チームは「親台湾」の傾向が強いとみられている。

 トランプ氏はこのところ中国に厳しい姿勢を示している。今月初めには、ツイッターに「南シナ海で大規模な軍事施設を建設してもいいと、中国がわれわれに尋ねたのか。私はそう思わない」と書き込み、中国が南シナ海で進める軍事拠点化を強く非難した。

 中国が南シナ海をほぼ囲むように設定する独自の境界線「九段線」については、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が今年7月に下した判決で国際法上の根拠がないと認定されている。中国は判決を「紙くず」と切り捨てているが、米国は日本などと連携し、中国に判決に従うよう求め続けていく必要がある。

 一方、中国海軍艦船が南シナ海で米海軍の無人潜水機を回収するなど、中国も米国を挑発する動きに出ている。トランプ氏はツイッターに「中国が盗んでから返す無人潜水機は要らないと言うべきだ」と書き込み、中国に強い姿勢で臨むよう米政府に求めた。

 台湾との結束が緊要

 オバマ米大統領はアジア重視のリバランス(再均衡)政策を進めてきたが、急速な軍備増強と強引な海洋進出を行う中国の脅威は高まる一方だ。台湾に関しても、中国は主権・領土問題で譲れない「核心的利益」と位置付けている。

 トランプ氏にはアジア太平洋地域への戦略的関与が求められる。日本、韓国など同盟国との関係強化はもちろん、台湾との結束が緊要である。