中国ガス田開発、看過できない背信行為だ


 政府は東シナ海の日中中間線付近で中国が設置した16基のガス田開発施設のうち、10月に入ってから2基で新たな天然ガスの生産活動を示す炎を確認した。これで炎が出る施設は12基となった。共同開発についての日中合意を無視した行為であり、日本政府は直ちに抗議したが、さらに実効ある対抗措置を講じるべきである。

 日本との合意を無視

 日中両政府は2008年6月にガス田の共同開発で合意した。安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が今年9月に会談した際も、共同開発に向けて事務レベルで協議を進めることで一致している。今回の中国側の生産活動は、それらを無視した背信行為であり、看過できない。

 両国が共同開発に合意した背景には、日中中間線付近にガス田が存在していることがある。中国は04年、中間線のすぐそばでガス田「白樺」(中国名・春暁)の開発に着手した。

 施設は中国側の海域にあるとはいえ、中国側のパイプによって日中中間線を越えて日本側の海底資源が抜き取られる恐れがある。それを防ぐのが共同開発の目的だった。

 だが、これまでも合意を無視して中国は中間線付近でのガス田開発を加速させてきた。このため昨年7月、菅義偉官房長官は計16基に増えた中国側のガス田施設の写真を公表して「一方的な開発に抗議する」と中止を求めた。当然の措置であった。

 さらに見逃せないのは、ガス田施設の1基に船舶の航行を察知する小型レーダー施設が設置されていることである。このままレーダー施設が拡張されていけば、南シナ海と同様に東シナ海も中国の軍事拠点となる危険性が高まる。それによる脅威の高まりをわれわれは忘れてはならない。

 沖縄県・尖閣諸島周辺では今年6月、中国海軍艦艇が初めて接続水域内に入ったほか、8月初めには中国の公船十数隻、漁船約400隻が接続水域に現れ、公船数隻が毎日のように領海侵犯を繰り返した。「力による現状変更」に向けた動きに警戒が求められる。

 政府は、年内に中国で開催される予定の日中高級事務レベル海洋協議でも一方的なガス田開発をやめるよう求める方針だ。中国に対して毅然(きぜん)とした姿勢を貫く必要がある。しかし、中国側は「活動は全て争いのない中国の管轄海域内で行われている」と主張している。

 指摘しなければならないのは、中国の主張とは反対に東シナ海の排他的経済水域(EEZ)および大陸棚は境界が未画定である現実だ。このため、日本政府は日中中間線を基にした境界画定を行うべきであるとの立場であり、国際的にも容認される考え方である。

 手前勝手な主張撤回せよ

 一方、中国側は東シナ海での境界画定について、大陸棚の自然延長など東シナ海の特性を踏まえて行うべきだとして、中間線は認められないとしている。しかし自然延長論は過去の国際法で取られていた考え方であり、現在の国際法に照らせば根拠に欠ける。中国は国際ルールを尊重し、手前勝手な主張を撤回すべきだ。