比基地再開、期待される対中牽制効果


 フィリピン政府は、かつて米軍基地があった北部ルソン島のスービック湾の軍事拠点化を表明し、戦闘機や艦船を配備する方針を固めた。

 スービック湾はルソン島の西側にあり、中国と領有権をめぐって争っている南シナ海に面している。

 戦闘機や艦船を配備

 フィリピンは昨年4月、オバマ米大統領が公式訪問した際に、永続的駐留ではなく一時的な巡回ベースで米軍がフィリピン軍基地を使用するなど、米軍の事実上の再駐留に道を開く新軍事協定「防衛協力強化協定」を結んでいる。

 今般フィリピン政府は、スービック湾施設に戦闘機「FA50」2機、フリゲート艦2隻、第2戦闘航空団を駐留させることを明らかにした。スービック湾がフィリピン軍の基地として再開されることは、今後の米軍の本格復帰に向けての確実な歩みだと言える。

 スービック基地は冷戦時代、米海軍がアジア最大級の在外基地、戦略拠点として利用。冷戦後の1992年に撤退した。現在は経済特区となり、商業利用されてきた。2000年以降、米海軍の艦船がスービック湾に寄港するようになったが、その主たる目的は米比年次合同軍事演習「バリカタン」の実施と艦船修理にあった。

 軍の近代化計画を進めるフィリピンのアキノ大統領は13年9月、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに、スービック湾に米軍基地の復活を希望すると語っている。南シナ海における中国の強引な進出に、米国との共同対処を望んでいるからに他ならない。

 スービック湾の西方約270㌔には、スカボロー礁がある。同礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)にあり、同国が実効支配してきたが、12年に中比両国船がにらみ合う事態が起き、その後は中国船が居座り続けている。

 中国はスプラトリー諸島と同様に、浅瀬の埋め立てばかりでなく、人工島の建設や軍事拠点となる施設の整備を進め、実効支配を強化する恐れが強いと指摘される。

 日本とフィリピンは今年1月、防衛協力の覚書を締結し、協力強化の姿勢を見せている。この5月には南シナ海に面した海域で、海上自衛隊とフィリピン海軍が共同訓練を実施したのも、その一環である。

 安倍晋三首相とアキノ大統領は6月の首脳会談で、日本がフィリピンの沿岸警備隊の能力強化を支援することなどで合意した。両国の防衛装備品移転協定が締結されれば、日本からP3C哨戒機など監視能力を高める装備の移転が可能になる。

 河野克俊統合幕僚長は訪米中の講演で、南シナ海での警戒監視活動に自衛隊が参加する可能性について「今後の課題だ」と語った。これに関しては米国の期待も強い。日米比が中国への危機感を共有していることの表れだと言えよう。

 米軍回帰で抑止力向上

 スービック基地に米軍が本格復帰すれば、中国への抑止力が高まる。同基地再開が最大の牽制効果を発揮することが期待される。

(7月29日付社説)