ガス田施設、懸念される中国の軍事拠点化


 中国が東シナ海の日中中間線近くで、ガス田開発のためとみられる施設を拡張していることが分かった。

 こうした施設は日本の経済的利益を損なうばかりでなく、軍事利用される可能性も否定できない。

日本との合意に反し拡張

 日中両国は2008年6月、ガス田の共同開発で合意。しかし、そのための条約交渉は10年9月の中国漁船領海侵犯事件で中断した。

 中国の施設拡張は合意に反するもので許されない。放置しておけば、日本側の資源まで吸い取られてしまう可能性がある。安倍晋三首相が国会答弁で「新たなプラットホームの建設を含め、一方的な開発を進めていることに繰り返し強く抗議している」と述べ、認められないとの認識を示したのは当然だ。

 懸念されるのは経済的損失だけではない。中国がこうした施設を軍事利用する恐れがあることだ。

 中国は13年11月、沖縄県石垣市の尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定した。圏内には地上レーダーが探知できない区域があるが、施設にレーダーを配備すれば補完することができるという。

 施設にはヘリポートを設置できるほか、土台を堅牢にした場合には垂直離着陸機による利用も可能になるとされる。

 中谷元・防衛相は「中国が安保面での利用を進めた場合、東シナ海における監視・警戒能力が向上し、自衛隊の活動が以前より把握される可能性がある」と述べた。

 中国は、フィリピンやベトナムなどが領有権を主張する南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で、岩礁を埋め立て滑走路などを建設している。

 国際ルールを無視してこうした強硬姿勢を示すのは、南シナ海の地図上に「九段線」という境界線を引いて、多くの海域を自国のものだと主張しているためだ。

 東シナ海でもガス田開発の施設を軍事拠点化することで、日本への圧力強化とともに「内海化」を狙っているのではないかとの疑いは拭えない。

 尖閣周辺では中国公船が領海侵入を繰り返しているが、尖閣から約300㌔北西にある浙江省・南麂列島では、レーダー設置やヘリポート整備などが進められているという。南麂列島は自衛隊や米軍の基地がある沖縄本島よりも尖閣に約100㌔近く、滑走路が建設されれば尖閣奪取に向けての態勢強化につながろう。

 中国の東シナ海での海洋進出活発化に対し、日本は抑止力を高める必要がある。南西諸島の防衛強化をめぐっては、沖縄県・与那国島に今年度中に陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配備する予定だ。同県・宮古島への陸自配備も地元が受け入れる考えを表明した。

安保法案の早期成立を

 何よりも集団的自衛権行使を認める安全保障関連法案の早期成立が求められる。

 野党や一部メディアの「戦争法案」「違憲法案」というレッテル張りは、あまりにも無責任で危機感に欠けている。これは戦争を防ぐための法案だ。

(7月11日付社説)