中国国防費前年比12・2%増、軍拡で国際秩序を乱すな


 中国が全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)で覇権主義丸出しの国防予算を公表した。2014年は8082億3000万元(約13兆4400億円)に上り、前年比12・2%増。4年連続で2桁の伸びという軍拡予算だ。

 成長鈍化でも2桁の伸び

 警戒されるのは、李克強首相が行った政府活動報告の中で、安倍晋三政権への批判が述べられたことだ。李首相は「第2次世界大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序を守り抜き、歴史の流れを逆行させることは決して許さない」と強調した。

 名指しは避けているが、沖縄県・尖閣諸島問題や靖国神社参拝をめぐって対立する安倍政権を牽制(けんせい)することで、中国の軍拡路線を正当化しようとする発言であることは間違いない。

 だが日本の防衛費は前年度比で実質0・8%増であり、厳しく抑制されていることは周知の事実だ。さらに日本は戦後一貫して自由と平和と民主主義の道を歩んできている。「歴史に逆行している」とはとんでもない言い掛かりだ。中国の方こそ、不当な領有権主張に基づき尖閣周辺で領海侵犯を繰り返し、一方的に防空識別圏を設定して国際秩序を乱しているではないか。

 1970年代末に始まった改革開放政策以降、朱鎔基、温家宝両氏ら歴代首相が30回以上政府活動報告を行ってきたが、今回のように特定の国を念頭に置いて批判したことはほとんどない。習近平政権の対日強硬姿勢を示すものと見ていいだろう。

 忘れてならないのは、中国の実際の国防支出は公表された分の2倍以上とも言われていることだ。米国防総省の「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」は、中国の軍事力近代化の「透明性の欠如」を指摘している。国際社会は足並みを揃(そろ)え中国の軍拡を批判するとともに国防政策の透明性向上を求めていくべきである。

 成長が鈍化する中国経済は問題山積で、無理な公共事業による地方政府の借金は総額約300兆円とも言われる。その中での国防費の伸び率12・2%は過去3年で最大のものだ。習政権が経済の実態を無視した軍拡路線を進んでいることを示している。中国は治安対策や所得格差是正などの課題も抱えているが、克服できるか疑問だ。

 李首相は報告の中で「国家の海洋権益を断固として守る」との決意を表明した。中国は沖縄本島から南シナ海につながる「第1列島線」と東京からグアムなどを結ぶ「第2列島線」を対米防衛線と位置付けている。このため西太平洋での軍事演習を繰り返している。

 中国海軍はハワイ沖まで艦艇を派遣し、米太平洋軍の電子情報を収集しているという。中国が尖閣問題で強硬姿勢を崩さないのは米国の出方を探る狙いからであろう。

 日米安保体制の強化を

 習国家主席は昨年の訪米時にオバマ大統領に「広大な太平洋には米中両大国を受け入れる十分な余地がある」と伝えたという。同じ第2次大戦の戦勝国として米中で太平洋を分割支配しようという野望だ。中国の軍拡に対抗するには日米安保体制の強化が必要だ。

(3月7日付社説)