中台会談、台湾の民意反映されるか懸念


 中国と台湾が1949年の分断後初めて、中台関係を担当する閣僚級の直接会談を南京で行い、当局間の対話メカニズムをつくることで合意した。

 中台会談は両岸関係の緊張緩和の点ではプラスだが、手放しで歓迎できない。「現状維持」という台湾の民意が反映されるか懸念される。

 「現状維持」望む台湾人

 中台双方はお互いを国とは認めず、これまでは民間の窓口機関を通じて経済協力などを協議してきた。この関係が閣僚級会談で新しい段階に入るが、心配されるのは国力の差を背景に、中国が「中台統一」に向けて圧力を高めることである。

 しかし、台湾の民意は「現状維持」である。台湾での世論調査によると、54%が中台首脳会談に賛成と答える一方、独立か統一かを二者択一で問うと71%が独立と回答した。「自身は台湾人か中国人か」の問いには、約8割が「台湾人」と答えている。中国との政治的統一を求める機運は高まっていない。

 このような民意は最大限尊重されるべきだ。民意の背景にあるのは、中国との経済関係を重視して対話を望みつつ、中国の共産主義体制に違和感を抱き、現在の民主的な政治体制を維持したいという台湾の人々の思いである。

 2008年に発足した台湾の馬英九政権は、貿易自由化を推進する「経済協力枠組み協定(ECFA)」を締結するなど中国との経済関係強化に取り組んだ。しかし、経済利益を享受するだけで政治対話を引き延ばし続ける台湾の姿勢に中国はいら立ちを強めているとされる。今後は当局間の交渉を通じ、中台統一に向けた政治対話を本腰を入れて要求してこよう。

 中国の共産党政権は中台統一を悲願としている。今回の会談の中国側の狙いは、経済面を中心にした関係改善を政治面にも広げて統一へとつなげたいというものだ。

 特に忘れてならないのは、統一に懸ける中国の習近平国家主席の執念である。習主席は台湾の蕭万長前副総統と会談した際に「中華民族の偉大な復興の共同促進へ政治的な意見の相違を解決し、次の世代に残してはならない」と語っている。

 中国、台湾を問わず、中華民族には「中国こそ世界の中心」という中華思想がある。だからこそ習主席は、イデオロギーの相違を超えた民族主義をアピールして政治対話に引きずり込もうとしているのだ。

 だが、中国にとって台湾との政治的統一にはリスクも伴う。台湾の人口は2300万人。民主主義の浸透した台湾を中国が取り込んだ場合、その影響を受け、中国社会で共産主義体制への批判が強まる恐れがある。

 対日圧力強化への警戒を

 今回台湾代表と会談した中国代表は、南京大虐殺記念館を訪れた際、日本で南京大虐殺を否定する発言が出ていることを受けて「両岸には違いもあるが、民族の根本的利益での共同の立場を表明すべきだ」と述べた。

 「反日」を中台関係強化のバネにする考えを示したものだ。中台間の緊張緩和が中国の対日圧力強化へとつながることを警戒すべきである。

(2月14日付社説)