ジンバブエ次期大統領、民主主義定着と経済再生誓う


 ジンバブエのムガベ大統領辞任に伴い、亡命先の南アフリカから22日に帰国したムナンガグワ前副大統領(71)は同日夕、与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)の党本部で演説し、「われわれは新たな広がりのある民主主義の始まりを目撃している」と語り、民主的プロセスによる国家再建に尽力する考えを表明した。同国の国営テレビによると、ムナンガグワ氏は24日に大統領に就任する予定。

弾圧や汚職の前歴に懸念も

 同氏はまた、演説で「国民の声は神の声だ」とも述べ、民主主義の定着に尽力する姿勢を強調した。さらに、「われわれの経済を成長させたい。われわれは仕事が欲しい。仕事だ、仕事だ」と訴え、国民の9割が失業中と推計される同国で、雇用創出をはじめとした経済の再生に取り組むことを約束した。

ムナンガグワ氏

22日、ジンバブエのハラレで演説するムナンガグワ次期大統領(EPA=時事)

 一方、同氏は、自身に対する暗殺計画がこれまでに数回あったと語り、国軍がムガベ氏退陣を平和裏に進めたことに謝意を表した。また、亡命後も軍幹部と常に連絡を取っていたことも明らかにした。ムガベ氏を退陣に追い込んだ背後に同氏が関わっていたとの報道も一部ある。

 ただ、ムナンガグワ氏が大統領になった後に、果たして国家の変革ができるのかとの不安の声が多いのも事実。同氏は、最近までムガベ氏の最古参で最側近の人物であり、ムガベ氏と同様、残忍さと汚職で名高く、国民の間には「第2のムガベ」になるのではとの懸念も根深いという。

 ムナンガグワ氏が治安当局のトップを務めていた時代に、多くの野党や反体制派への弾圧を強化、1980年代中盤には、ヌデベレ族が約2万人虐殺された事件への関与が疑われている。

 同氏は米国と欧州連合(EU)の制裁対象にもなっていたことがある。政治的な抜け目のなさから「クロコダイル」(ワニ)との異名も持っている。

(カイロ鈴木眞吉)