ナイジェリアでの拉致解決に向け支援強化を


 アフリカ西部のナイジェリアで、200人以上の女子生徒がイスラム過激組織「ボコ・ハラム」に拉致された事件は、発生から1カ月以上が経過した今も解決の兆しが見えない。国際社会はナイジェリア政府への支援を強化し、女子生徒救出に全力を挙げるべきだ。

 女子生徒多数が行方不明

 ボコ・ハラムとは現地語で「西洋の教育は罪」を意味する。欧米文化や資本主義を否定し、厳格なイスラム法に基づく社会の樹立を目指してキリスト教会や学校などへの襲撃を繰り返している。2月には北部ヨベ州の寄宿学校を襲撃して男子生徒59人を惨殺する残忍な事件を引き起こした。

 女子生徒らは4月中旬、北東部ボルノ州にある中等学校からトラックで拉致されて以来、行方不明のままだ。ボコ・ハラムは「奴隷にして売り飛ばす」と脅迫し、解放と引き換えに同国当局に拘束された仲間の釈放を求めている。

 黒や灰色のベールを身に着けた100人以上の少女の映像も公開された。指導者を名乗る男は「女子生徒たちがイスラム教徒に改宗した」と述べているが、改宗の強要があったとすれば許されない。

 ナイジェリアはアフリカ最大となる約1億7000万人の人口を抱え、有力な産油国でもある。近年は7%前後の高い経済成長を遂げており、サブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)地域の中でも最有力の投資先として注目されている。

 しかし油田はキリスト教徒の多い南部に集中し、イスラム教徒が多く暮らす北部では社会基盤の整備が遅れて貧困は解消されていない。貧困層の支持を取り込む形で、イスラム過激組織が勢力を伸ばしている。

 ナイジェリア国内ではテロが頻発しており、中部ジョスで少なくとも118人が犠牲となった20日の爆弾テロも、ボコ・ハラムの関与が疑われている。ナイジェリア政府は、宗教対立や南北格差などの解消に努めるべきだ。

 国際社会は女子生徒救出に向け、支援に動いている。米政府は国務省や軍、連邦捜査局(FBI)の関係者ら30人前後で構成された専門家チームを派遣し、空からの捜索も行っている。今のところ米軍部隊を送り込む考えはないようだが、野党・共和党のマケイン上院議員は「特殊部隊を送るべきだ」と主張している。オバマ米政権は一刻も早い救出のため、支援強化に向けた検討を進めてほしい。

 また、フランスとナイジェリアを含む西アフリカ5カ国の首脳はパリで会合を開き、情報共有の徹底や指揮系統の統一などを通じてテロ対策に関する連携を強化する行動計画を採択。ボコ・ハラムは国際テロ組織アルカイダとのつながりも指摘されており、オランド仏大統領は女子生徒救出のために「米英欧と西アフリカ5カ国が統一性を持って行動する」と述べた。

 テロの温床なくす貢献を

 日本にとってもナイジェリアをはじめとするアフリカとの関係は重要だ。

人材育成で成長を支援するなどテロの温床をなくしていく貢献が求められる。

(5月22日付社説)