文化財回収で決議要請―ユネスコ事務局長
イラク流出の防止で
【ニューヨーク30日池本拓】国連教育科学文化機関(ユネスコ)の松浦晃一郎事務局長は三十日、安全保障理事会に対し、イラクで略奪された文化遺産の取引を禁じる決議を採択するよう促した。国連本部での記者会見で語った。
松浦事務局長によると現在、ユネスコ条約(文化財の不法な輸出入及び所有権の移転の禁止及び防止に関する条約)に加盟しているのは、日本を含め、九十七カ国のみ。このためユネスコとして、国連の全加盟国に対して拘束力を持つ安保理決議の採択を働きかけている。
事務局長は今後の対応では、略奪文化財が国外に流出するのを防ぐことが緊急の課題と指摘し、略奪品リストの作成に着手したことを明らかにした。また、今回の略奪の経緯について、最初に始めたのは周到に準備していた犯罪組織のメンバーで、その後にイラク市民が続いたとの見方を示した。
略奪をめぐる米軍の責任については、「激しい戦闘の中では、何が起きてもおかしくない」とし、米軍批判は公平でも、有用でもないとの考えを述べた。
ユネスコはイラクでの略奪をめぐり、これまでに二回の専門家会合を開いて対応を協議。五月初めにも調査団を現地に派遣して被害調査を行う方向で米政府と協議している。また、すでに日本や米国、イタリア、スイスが、イラクの文化財保護のための資金拠出を表明している。
イラクでは一九九一年の湾岸戦争の後にも略奪が起きた。当時は国連制裁の影響でユネスコが思うように活動できず、略奪された四千点の文化財のうち、回収できたのは四十点ほどだったという。