WHOの勧告でトロント経済に打撃
SARSの死者数発表で過剰反応
【ロサンゼルス23日宮城武文】新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染にかかる危険が大きい地域として世界保健機構(WHO)が北京、香港に加えてカナダのトロント市を旅行制限地域にしたことで、トロント経済は大打撃を被ることになり、同市関係者は一斉に「WHOの過剰反応」として非難の声を上げている。
SARSの感染者は香港および中国全体で約四千人、死者がそれぞれ百人を超えて全体で二百人以上に上っているが、この地域以外ではトロントで感染者が百四十人、死者が十六人と突出している。
トロントは中国系移民が多く、香港からの旅客が多いことがトロントでのSARSの猛威に関連しているとみられている。しかし、オンタリオ州の公衆衛生局長は記者会見で、「WHOの反応は不必要な過剰反応であり、こちらの地域との相談もなく決定された。トロントには五百万もの人が住んでおり、安全なところであり、リスクは減少し続けている」と、WHOの発表に真っ向から批判を加えた。
SARSの患者を多数扱っているトロントのマウント・サイナイ病院のドナルド・ロー博士(微生物学)は「過去二週間に新たな隔離患者は出てきていない。感染は抑えられた。コミュニティは安全だといえる」と指摘、WHOの措置は不適切だということを強調した。
SARSおよびイラク戦争の影響で、カナダ航空はこの四月に乗客率が一二%減少、トロントのホテル利用率も昨年の七割に比べて、四八%に落ち込んだ。
トロントのメル・ラストマン市長は二十三日に経済的打撃に対応するため市議会に対して緊急戦略会議を招集する。オンタリオ州政府はカナダ連邦政府に対して、SARSによる損害で、二千六十万ドルの災害援助基金拠出を求めている。