イラク国民の困窮を懸念―国連
人道援助の「越境作戦」始動
【ニューヨーク5日時事】イラク戦争が続く中で、国連はイラク国民の困窮を懸念している。まだ危機的レベルには達していないが、「カウントダウンが始まっている」と判断。戦況をにらみつつ、備蓄が底をつき始めた食糧や水、衛生用品の搬送に全力を挙げる方針だ。
イラクに対する人道援助作戦は、難民が大量発生したアフガニスタンなどとは事情が異なる。一九九○年から制裁下に置かれたイラクの国民は、六割が国連の「石油・食料交換計画」に基づく政府配給に依存している。開戦前に数カ月分の配給が前倒しされたが、今月末ごろには備蓄食糧が底をつく見通し。配給システムの崩壊が最大の懸念だ。水や電力の不足も深刻化しつつある。
国連安保理は三月二十八日、石油・食料交換計画に基づく輸入契約を緊急人道援助に充てるため、四十五日間に限って事務総長に一定の裁量権を与える決議一四七二を採択。国連は同時に関係国に二十二億ドルの援助を要請し、計画再開と各国の援助の二本立てで最悪の事態を回避しようとしている。
四日には国連児童基金(ユニセフ)のトラック六台が初めてクウェートからイラク南部のバスラ近郊まで到達し、水や衛生用品を配布。世界食糧計画(WFP)もトルコからイラク北部のドホクに小麦粉を搬送した。国連はこうした「越境作戦」に加え、イラク軍の抵抗が続く都市への「前線越え作戦」も展開する予定だ。
しかし、国際職員を復帰させ、援助を本格化するには、現場の治安確保が不可欠。米英軍の制圧した都市をたどるように活動を拡大せざるを得ないのが現状で、戦争を正当化する動きと受け取られかねないという微妙な問題もある。
国際社会の外交舞台で早くも戦後復興に向けた各国のさや当てが始まる中、国連にとっても、戦況をにらんだ厳しい戦いが続く。