安保理、無力化の危機―対立は危険水域に
「最悪のシナリオ」も
【ニューヨーク7日池本拓】イラク査察をめぐって国連安全保障理事会での対立が、危険水域にさしかかっている。大量破壊兵器という重大な問題で安保理がまひし、その無力ぶりがさらけ出されれば、国連の集団安全保障体制が揺らぎかねない。
米英などは、武力行使を容認する決議案を週明けにも採決に付す見通しだ。その場合、フランスなどが拒否権を行使して否決し、米英が「意思の同盟」を率いて独自の武力行使に踏み切れば、まさに「最悪のシナリオ」(ニューヨーク・タイムズ紙)となる。
国連憲章は、安保理に「国際の平和と安全の維持に関する主要な責任」を負わせている。中でも五大国には拒否権が付与され、とりわけ重い責任が課されている。
今回の問題では、その五大国が真っ二つに割れた結果、態度を明確にしていない非常任理事国の動向に焦点があたっている。二年ごとに改選される非常任理事国は、現実的な紛争対応能力に乏しく、紛争に直接の利害がないこともある。
こうした国々に、安全保障に関わる重大な決定が委ねられてしまうことについて、「ばからしい」(ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、チャールズ・クラウトハマー氏)という声が米政権に近い保守派からすでに漏れている。
イラク問題が落ち着けば国連改革に向けた議論が出てくる可能性もあるが、これは「米国が安保理を見捨てていなければの話」(国連消息筋)だ。安保理から、米国の軍事力という重しがはずれた場合、制裁などの強制行動に支障がでるのは目に見えている。
一方、今回のような常任理事国の対立が、もう一つの国際危機である北朝鮮問題で再現されないとも限らない。そうなれば、日本の「国連中心主義」が試される事態に発展することも予想される。