大量破壊兵器使用を懸念―準備不足のイラク周辺
国連の緊急援助計画
【ニューヨーク24日池本拓】米国によるイラク攻撃を想定し、国連は緊急人道援助計画の策定作業を続けている。この中で関係者が懸念を強めているのは、イラク軍が大量破壊兵器を使用した場合の対応だ。周辺諸国は、生物・化学兵器に対する備えが十分ではないからだ。
これまでの国連査察では、大量破壊兵器は発見されていない。しかし、外交関係者によると、米英両国はイラクがこうした兵器を今でも保有していることを示す確かな証拠を握っており、イラク軍幹部も「大量破壊兵器は戦略的に有効」と考えているもようだ。
外交筋によると、イラク周辺で化学兵器に対する十分な備えができているのはイスラエルのみ。サウジアラビアやクウェート、カタール、ヨルダンなどほとんどの国は、必要な機材の調達や訓練が不足しており、今から準備を急いでも間に合わない公算が大きいという。西側外交筋や国連当局者は、仮に生物・化学兵器が使用された場合、中東一帯がパニックに陥る可能性が大きいとみている。
そうした中、期待されているのが世界保健機関(WHO)の活動だ。WHOは米同時テロ以降、生物・化学兵器がテロに利用された場合を想定して対応を強化してきた。すでにイラク周辺国の政府などに対し、非公式にアドバイスを行っているほか、同地域に解毒剤などの医療物資を速やかに輸送する体制を整えつつある。
国連の人道援助当局者の一人は、「不確定要素が多すぎる」として、今後の展開を見通すことの難しさを打ち明ける。だが、はっきりしているのは資金不足の問題だ。実際に国連は先月中旬、ジュネーブで開かれたイラク問題での支援国会合で、戦争による人道危機に備えて総額三千七百五十万ドルの拠出を各国に要請している。