中国の「弱点」に波及へ―SARS
農村、出稼ぎ労働者に打撃
【北京23日時事】中国では新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染者が三十一省・自治区・直轄市の約三分の二に当たる十九地区に拡大し、内陸部などの農村に大きな打撃を与える懸念が出てきた。農村など貧困地区では医療体制が整っておらず、感染による死亡率が高くなるほか、医療費を払えず、治療すら受けられない農民が相次ぐ可能性が高い。SARS問題は、出稼ぎ労働者や失業者らを含めた中国の「アキレスけん」に波及する恐れがあり、政府は本格的な対策に乗り出した。
衛生省の二十二日の発表によると、二千百五十八人に上る感染者(うち死亡は九十七人)は、内モンゴル自治区、甘粛省、湖北省、寧夏回族自治区など内陸部にも拡大。中国の医療関係者は「人口十万人規模の県レベルになると、医療施設が貧弱になる」と明かす。
また、都市への出稼ぎ者の中には、農民戸籍を隠して不法に都市で働く労働者もおり、感染しても治療を受けられないケースがある。新華社電によると、内モンゴル自治区の病院では十六日、感染を疑われた七人が入院に必要な保証金を支払えず、六時間も診察してもらえない事態が発生した。
出稼ぎ労働者や失業者は衛生的に劣悪な環境で生活しており、一人が感染すれば、一気に周囲に広まる恐れがある。また、移動を繰り返すため、感染が広範囲に拡大する危険性があるという。
温家宝首相もこのほど、「農村へのSARS感染拡大防止」を厳命した。中国紙によると、政府は内陸部での疾病予防施設拡充のため、二十九億元(約四百二十億円)を投じるほか、北京市では医療費を負担できない感染者に無料で治療を受けられるよう検討している。観光当局も農村や西部地区に旅行に行くことを当面禁止するよう求めている。