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平成22年1月18日

「食料、水はどこだ」 怒り充満、治安悪化の懸念も−ハイチ大地震

5日目のハイチ被災地ルポ

 大地震から5日目を迎えたハイチの首都ポルトープランスでは16日、援助物資の配給不足が続き、被災者の間にいら立ちと怒りが広がった。遺体の収容作業の遅れから、衛生状態が悪くなり、市内には治安の一層の悪化につながりかねない不穏な空気も漂い始めている。

 ◇「政府も外国も来ない」

 地震で倒壊した大統領宮殿前の公園。1000人は超えるとみられる被災者がシーツや木の棒で作った急ごしらえのテントで野宿を続ける。給水車が到着すると、われ先にと押し寄せる人の間で小競り合いが始まった。給水車は一定量を給水すると、行列を振り切るように去っていく。

 大統領宮殿に米海軍のヘリコプターが飛んできた。兵士がわずか数箱分の水や清涼飲料水を降ろすのを目にした人々が一斉に宮殿の鉄柵に飛びついた。ラジオで国際社会の支援が入ってくると聞かされながら、配布される物資が極端に少ないことが、被災者同士の対立を招いている。

 「地震以来、食料が配られているのは見たことがない。国連もいるのは兵士ばかりだ」と野宿組の一人フランス・ジェリーさんは話す。市民の多くは、援助物資が横流しされていると信じている。「この国には政府がない。外国の援助も来ない。ハイチには怒りが渦巻いている」

 同様の光景は市内各地で見られた。全壊したスーパーマーケットから食料を掘り起こそうとする人々。空港には、各国からの援助物資が配給されると信じる人々が長蛇の列をつくった。

 被災の度合いが激しい中心部では、ゴーストタウンのような町並みの中で人々が暮らす。どこからか4発の銃声が響いた。路上に放置された遺体の腐敗が進み、市内に異臭がまん延する中、市民の中で「あすへの不安」は一層募り、市外へ脱出する人も増えている。

 ◇「救出劇」と「悲劇」

 一方、市内最大のハイチ大学病院には、地震後初めて医療物資が到着。倒壊を免れた一部病棟で、地震の負傷者の本格的な救護が始まった。この日もがれきの下から救出された生存者が1人運び込まれたという。米国や英国の救出隊もそれぞれ生存者を発見しており、救出劇は続いている。

 院内では、妊娠7カ月の妊婦がけがをした足の手当てを受けていた。女性はがれきの下から夫に救出されたが、3歳の娘は死亡していた。苦しそうに顔をゆがめる女性のそばで夫が「この先どうしてよいのか分からない。娘を亡くし、家もなくし、もうすぐ赤ん坊が生まれるのに行き場がない」とつぶやいた。

 同じ病院の一角では、倒壊した大学のがれき撤去が進む。そのそばで大声で泣き叫ぶ男性の姿。看護師になるための勉強をしていた23歳の娘がまだ発見されていないのだという。男性は救出活動が終了した後も、「せめて娘の亡きがらを」と毎日現場に通っていた。

 しばらくして訪れたこの現場では、がれきの下から、重なり合った十数人の遺体が発見されていた。男性が娘に会えたのかどうかは分からない。(ポルトープランス時事)



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