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書評
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2012年4月23日

禁煙外来へようこそ

高橋 裕子著

こころに響く40の物語

 高校時代にいたずらで一口煙を吸ってむせて以来、たばこに縁のない私だが、もし喫煙者としてこの本に出会っていたら、内科医で、日本禁煙科学会理事長でもある著者の指導を仰ぎながら禁煙を試みたい、と間違いなく思ったことだろう。副題に「こころに響く40の物語」とある。禁煙希望者だけでなく、人間に対する著者の愛情がにじみ出ていて、心温まる一冊。

 「父親がたばこをやめた日」というエピソードがある。かつて禁煙を試みて挫折した女性が再び著者のもとを訪ねてきた。前日から禁煙を始めたが、不安でやってきたのだという。

 その女性が二度目の禁煙を決意するに至った経緯を語り始める。前日は40歳の誕生日。父親を看病する母親に電話した。その時、「お父ちゃん、たばこやめて40年になるのねえ」と、母親が初めて打ち明けたのは女性の出生と父親の禁煙にまつわる秘話だった……。

 詳細は本を読んでいただきたいが、この短い物語がじんとくる。結論だけ紹介すると、母親から聞いた話によって、それまで疎ましく思っていた父親の愛情を知った女性は、今度は著者の手を借りることもなく禁煙を続けられるように見えたという。

 たばこの健康への害はよく知られるようになった。それでも喫煙者に、肺癌になる、心臓病も怖いと説教しても「じゃあ、止めよう」とはいかない。禁煙によって人生の輝きがまったく違ったものになることを伝えることがたばこと縁を切る近道になるという著者のメッセージである。

 たばこを吸い始めるにも、また禁煙するにも、人それぞれ人生のストーリーがあることを知って、ほろりとさせられる。それでいて、読み終わったあと、たばこに対する甘い考えが変っていた。それぞれの物語のあと、喫煙にまつわる医学的な解説欄を設けて、著者がやさしく語りかけるからなのだろう。

 禁煙を試みたい人だけでなく、誰もが紫煙では到底味わえない、さわやかな読後感である。

森田清策

(本紙掲載:4月22日)


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