『虫たちの生き残り戦略』
安富和男著
謎の行動の裏に隠された知恵
この世は生存競争社会で、出世争いからリストラの恐怖に怯(おび)えるなどストレスが募るが、虫たちの世界はもっと生き残りにかける競争は激しい。本書は、そんな虫たちの生き残りをかけた世界を垣間見せてくれる。四億年の歴史をもつ昆虫類は、環境へ巧みに適応し、姿形や生活様式をさまざまに進化させてきた。一見不可解な振る舞いにも、生き残りをかけた驚くべき知恵が隠されている。
例えば、樹液に集まる小さな虫たちの世界。甘い樹液に群がる虫を捕食するヨツボシケシキスイの幼虫は、樹液の中に浸って暮らし、樹液のほかにショウジョウバエなどの幼虫を食べて育つ。
しかし、そのケシキスイを捕食する天敵もいる。ボクトウガの幼虫だ。そのわなが実に甘い魅力に満ちたものである。ボクトウガの幼虫は、幹に穴をあけ樹液を滲(にじ)み出させ、そこにやってきたケシキスイなどの幼虫をアゴで捕らえてしまうのである。
また、捕食されないために有毒な植物を食べ、その毒を体内に取り込んで生き残りを図る虫もいる。それがマダラチョウの仲間で、幼虫時代に有毒なガガイモ科植物の葉を食べる。この毒成分のカルデノライドは、鳥や哺乳類などに激しい中毒を起こす。そのために、一度ひどい目に遭った鳥は、この幼虫を見ても食べようとしなくなる。
最新の知見を交えながら虫たちの行動の謎に迫る二十四の話が収録されている。
(中公新書 本体七〇〇円)

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