書評
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マーク・トウェイン新研究

有馬容子

神秘的なものへの興味も

 マーク・トウェインは、『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』の作家として知られている。その健康的なユーモアとアメリカのフロンティア・スピリットを象徴する前向きな思想は、アメリカの黄金時代をそのまま表していたとも言えるだろう。

 しかし、マーク・トウェインは、現実のアメリカの風土を生き生きと描くとともに、晩年にはスピリチュアルなものに関心を抱き、ファンタジー的な作品に数多く手を染めるようになる。未来の世界の話や人間が細菌になって細菌世界をめぐる話とか、現代のアメリカ人がイギリスのアーサー王の時代にタイムスリップしてその世界を改造しようとする物語など、一種神秘的なものへの興味が強く打ち出されている。

 本書によれば、マーク・トウェインのこのようなファンタジー的な作品は、これまであまり注目されて来なかったという。むしろ初期の作品に比べて完成度の劣る実験的な作品と見られて軽視される傾向があったと指摘している。

 本書は、この晩年のファンタジー的な作品群が、突然現れたものではなく、もともとトウェインの精神の中に潜んでいた超常現象への興味から来ていることを後付けていく。例えば、アメリカ文学で完成度の高い作品と評価される『ハックルベリー・フィンの冒険』には、後半部に破たんを来しているという批評が少なくなかった。

 トム・ソーヤーが現れる脱出の場面が小説の構成を損なうものとされて来た。しかし、著者は、この構成の破たんとも見えるのは、トウェインのテレパシーへの関心、心理学への傾斜から来るものであり、それは書かなければならなかった部分だったと指摘する。そして、その背景に故郷の村がオカルト的なものへ強い迷信をもっていた村だったことなどを浮き彫りにしていく。このあたりの分析や探究は、資料を細かく検討してのものであり、なかなか読ませるものがある。

 知的な刺激と知見に満ちた論考である。

 (彩流社 本体二、五〇〇円)

フリーライター・山川修一



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