梅原猛の授業 仏教
梅原 猛著
学校での宗教教育の重要性
現在では、宗教教育は行われていないし、倫理道徳の授業も形だけのもとなっている。そのような学校教育の在り方についていろいろな見方があるが、青少年の荒廃には、この道徳教育の欠如を指摘する声も少なくない。
しかし、倫理道徳・修身の時間というと、戦前の「忠君愛国」の思想教育という批判もあってなかなかその必要性は認められていない。だが、現在の青少年の犯罪や事件は、まさに精神の荒廃が生み出したものであり、その精神の再建は喫緊の課題となっている。
本書は、哲学者の梅原猛が学校においての「宗教教育」の重要性を仏教を中心軸として指摘し、仏教発展を歴史的に追いながら述べたものだ。実際に仏教系の中学校で授業したものを再録していて、難解になりがちな仏教の世界をかみ砕いて説き、分かりやすい講義録となっている。
最初に、宗教がなければ文明がないという話題に触れ、ロシアの文豪ドストエフスキーの小説『カラマーゾフの兄弟』を例に挙げ、宗教や倫理・道徳がなければ、人間は何をやっても許される、それこそ人殺しも許されるという考えに陥ることが指摘されている。
そして、宗教を抜きにした規則や規範だけでは、人間社会が破壊され、世界も平和を失って争いに巻き込まれるとする。その人間における心の苦悩を解放し、「いのち」の尊さを通して自然や動物、すべての命との共生を説いたものが仏教であるとし、キリスト教などの一神教との比較を通じてその特色を浮き彫りにしていく。
また、仏教がどのように生まれ、発展していったかを、釈迦の生涯を通して触れ、それが中国・韓半島経由で日本に到来した時、神道と習合して独自の日本的な仏教に結実していった経緯を説明する。仏教史の発展が分かりやすく説かれているので読みやすい入門書でもある。
途中、学生同士で「宗教は是か非か」という立場で討論させるなど、授業としてもユニークな内容になっている。
(朝日新聞社 本体一、三〇〇円) 野村 淳

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