書評
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『水戸光圀語録』

鈴木一夫

人情の機微にも通じた面も

 水戸黄門というと、テレビの時代劇ドラマで形成された「水戸黄門漫遊記」のようなイメージがあるが、その実像はかなり違っている。というより、水戸黄門は、当時の大名の中ではひときわ抜きんでていた知識人であった。

 その酸いも甘いもかみ分けた出来た“人物”である水戸黄門の言行録の中から選んで解説を付したのが本書。

 当時の大名の中でも、政治・学問に秀でただけではなく、人情の機微にも通じていた一面がよく伝わってくる一冊だ。

 「その罪人はその罪によって罰したのだから、それで事はすべて終わったのだ。いまここに当人がいないからといって、彼の旧悪をとやかくいってはならぬ」

 「ひとそれぞれに使いどころがある。一つのことに得意でも、他のことには不向きなことがある。その人の長所の方を評価して使ってやれ。一人の人間にあらゆる能力を求めるならば、使える人間などいないだろう」

 光圀の面目が躍如とした感じの言行だが、若い時によく遊んだ面影をうかがわせるものもある。

 「税金を取るときは、女を愛するようにせよ。男の子を愛するようにはしないことだ」

 男女の愛は両方に快感だが、男色だと一方だけにしか快感がないから、男女の愛のように農民から税金を取れという意味だと言う。

(中公新書 本体六八〇円)



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