生活者の日本統治時代
呉 善花著
歴史の生き証人の「生の声」
呉善花女史の韓国人論、日韓関係論は、既に何冊も著書に著され、日本で一定の評価を得ているといえよう。本書は、インタビュー・シリーズとその解説という形式になっており、読みやすい。
「この本でつかみ取っていきたいことは、日本統治時代の朝鮮半島で、韓国人(朝鮮人)と日本人がどのように関係し合って生活していたかということである」
副題に「なぜ『よき関係』のあったことを語られないのか」とあるが、戦後の韓国では統治時代の政治史や制度史は研究されるが、社会史、生活史は「不要」という考えが支配的だという。日韓関係に横たわる問題は、歴史にかかわっているだけに簡単ではない。それでも、本書は生の声を紹介することで、より実感的にとらえやすくしたものだ。
登場するのは、当時の朝鮮に生活した日本人十人、日本人との関係が深かった韓国人五人である。ほとんどが八十歳前後か、それ以上の年代。歴史の生き証人である。
日本人は、一家で水原(ソウルの南方)に住み小学校に入学した男性、新義州(現北朝鮮)に生まれ育った男性と女性、旧総督府幹部、朝鮮最初の女学校で教べんを執っていた母親の娘など。韓国人は、センピョ醤油会社社長、京城帝国大学(現ソウル大)で多くの日本人同窓生をもつ男性、映画監督、弁護士協会会長、ソウル大学名誉教授−である。
質問は、差別の有無、創氏改名の実態、強制連行、神社参拝、終戦直後の治安、友人関係、近所との付き合い−などに及ぶ。その結論を著者は次のように導き出した。
「政府がやったことは国民がやったこと、国民がやったことは政府がやったこと、日本がひどいことをしたというのは日本人がひどいことをしたのと同じこと、といったとらえ方になってしまう」
さらに言う。
「日本統治によって皇民化された、日本の神を尊重させられた、言語を奪われた、氏を奪われた(中略)…などさまざまに言われ続けてきたが、その主張を百パーセント承認しても、なおかつ人々の内部に身体化された『クニ』はまったく損傷を受けていない」
ここでいうクニとは生活共同体や風土を指している。大胆で勇敢な主張である。
(三交社、本体一、五〇〇円)
岩田 均

|