平成18年7月1日
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小泉・ブッシュの日米関係(上)
弱体化した同盟を再活性化
九月末に任期切れを迎える小泉純一郎首相は、最後になる可能性が高い今回の訪米で、ブッシュ大統領と日米同盟を一層強化することを確認した。両首脳の「蜜月関係」を基盤にした五年間の日米関係を総括し、「ポスト小泉」時代の課題を検証する。
(ワシントン・早川俊行)
「米英」並み関係へ独自戦略
ホワイトハウスで首脳会談に臨む小泉純一郎首相とブッシュ米大統領=29 日、ワシントン(EPA=時事)
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知日派のリチャード・アーミテージ前米国務副長官ら超党派の外交専門家が二〇〇〇年十月に発表した「アーミテージ・リポート」を読み返すと、ブッシュ政権の対日政策は、基本的にこの報告書に基づいて進められてきたことがよく分かる。それもそのはずで、アーミテージ氏はじめ報告書をまとめたメンバーが、ブッシュ政権発足後、アジア政策を取り仕切る要職に就いたのだから、当然の結果ともいえる。
報告書の骨子は、欧州とは対照的にアジアでは紛争が発生する可能性が否定できないとの認識に基づき、日米同盟をアジア戦略の中心に据えるというものだった。一九九〇年代に冷戦終結や通商摩擦で弱体化していた日米同盟を再活性化する方向性が提示された。
「報告書は多くが現実のものになった」。アーミテージ氏がこう振り返るように、日米関係はこの五年間で急速な進展を遂げた。報告書の内容が具体化した事例を挙げれば、米国が尖閣諸島の防衛にコミットする姿勢を明確にしたこともその一つだ。
クリントン前政権は中国への配慮から、日米安保条約が尖閣諸島に適用されることを明確にしなかった。これに対し、ブッシュ政権は二〇〇四年三月に「尖閣諸島は日本政府の管理下にあり、日米安保条約は尖閣諸島に適用される」との公式見解を発表。これにより、日米間の“トゲ”の一つが取り除かれ、中国に対する大きな抑止力になったことは間違いない。
こうした成果は、アーミテージ氏ら「日本重視派」が数多く政権入りしたことが大きいが、小泉・ブッシュ両首脳の個人的な信頼関係がその土台になった側面は否定できない。報告書をまとめた一人で、その後ホワイトハウス入りし、両首脳の関係をつぶさに見てきたマイケル・グリーン前国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長も「二人の相性は本当に重要だった」と認める。
グリーン氏によると、〇一年九月の同時多発テロ後、小泉首相の言葉が大統領を勇気づけたという。「同情の念を表明する首脳は多くいたが、小泉首相は『これはテロとの闘いだ。われわれは勝利しなければならない。日本も支援する』と語った数少ない指導者の一人だった」
その後、小泉首相はインド洋とイラクに自衛隊を派遣し、大統領との“約束”を果たす。財政支援だけで済ませた湾岸戦争時とは異なり、「汗を流す」貢献をしたことが、大統領の信頼を勝ち得る効果をもたらした。
日米の緊密化が進んだことは、小泉外交の成果であることは確かだ。ただ、日本が確固たる戦略を持って米国と付き合ってきたかどうかは大きな疑問が残る。
米国は独自の国家戦略を実現する「手段」として日米同盟強化を進めているのに対し、日本は米国との関係自体が「目的」と化している感が否めない。米国の軍事力に依存する日本としてはやむを得ない事情があるものの、米国のある専門家は小泉首相について、「これほど米国に恩を売った総理はいないが、これほど米国に要求しない総理もいない」と見る。こうした指摘が出るのは、「戦略なき日本」の一面を表しているともいえる。
アーミテージ・リポートは、日米が目指すべき目標として米英同盟を挙げている。川上高司・拓殖大教授は、共通の戦略を互いに練り上げている米英関係に近づくには、「日本も自ら戦略を描き、米国をそれに巻き込むことが必要」と指摘する。
米英同盟の次元まで至るのは容易でない。だが、日本の国益を達成するために、対等な同盟関係にどう近づいていくのか。その根幹のビジョンづくりは「小泉後」の大きな課題となる。