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平成16年11月5日

ブッシュ再選 (上)

 二日に行われた米大統領選挙は一時、オハイオ州での勝敗をめぐって混乱したものの、共和党のブッシュ大統領が民主党のケリー上院議を破って、再選を果たした。米世論の二極化を反映し、まれに見る大接戦だったが、勝敗を分けたポイントを振り返ってみる。
(ワシントン・三笘義雄)

「最高司令官」の信頼度で勝利

ケリー上院議員 イラク“失政”を攻め切れず

 9・11同時テロ以降初めて、かつ「テロとの戦争」の真っただ中に行われた今年の大統領選。米国民は最終的に、ケリー上院議員よりも、ブッシュ大統領の方が「戦時の最高司令官」にふさわしいと判断した。

 選挙戦を振り返ると、ブッシュ陣営は、対テロ戦争における“実績”を前面に打ち出しながら、ブッシュ氏の「強さ」「揺るぎなさ」「決断力」など指導者としての“資質”をアピールしてきた。過去三年間で、かつてテロリストの温床だったアフガニスタンのタリバン政権が崩壊し、イラクのフセイン元大統領は「牢屋(ろうや)の住人」(ブッシュ氏)となり、リビアは大量破壊兵器開発を放棄した。「米国と世界はより安全になっている」というブッシュ氏の主張は説得力があった。

 一方のケリー氏は、“実績”の面ではベトナム戦争への従軍歴が唯一のよりどころだったことが限界だったといえる。七月末の民主党大会の大半は、ケリー氏の「ベトナム戦争の英雄」像を演出するのに費やした。八月に入ると、ベトナム退役軍人グループが、ケリー氏の軍歴や除隊後の反戦運動を批判するテレビ広告を放映。ケリー陣営の対応の遅れも重なって、大きなダメージとなった。

 さらに、ケリー氏の上院議員としての「二十年間」も格好の標的となった。同氏は、一九八〇年代はレーガン政権の軍備拡張に反対し、九一年の「湾岸戦争」への米軍派遣にも反対するなど、一貫して“反戦”“軍備縮小”に傾斜。

 ブッシュ陣営は、「もしケリー氏が大統領だったら、今も冷戦が続き、クウェートはイラクになっていた」などと批判し、ケリー氏のリーダーとしての“資質”を完全否定した。

 各種世論調査では、テロ・安保政策の分野で一貫して、ブッシュ氏がケリー氏に20ポイント前後リード。「戦時の最高司令官」のイメージ戦で、ブッシュ陣営の“圧勝”という結果になっていた。

 しかし、それでも大統領選が大接戦となったのは、イラク問題の不安定化が大きな要因だ。

 イラク戦争の“大義”だった大量破壊兵器は発見されず、米兵の戦死者は一時、急増。五月には、バグダッド郊外のアブグレイブ刑務所での米兵によるイラク人捕虜虐待スキャンダルが発覚した。

 イラク問題で“失点”続きのブッシュ氏だったが、逆に言えば、ケリー陣営は、そうした“好機”をうまく利用できなかったといえる。

 ケリー陣営は春から夏にかけて、ケリー氏の「強さ」「指導力」を強調する“前向き戦略”に徹し、ネガティブキャンペーンを繰り返すブッシュ陣営とは一線を画した。ブッシュ政権のイラク政策批判に大きく舵(かじ)を切ったのは、ブッシュ氏が共和党大会“効果”で勢いづいた直後の九月に入ってからだ。

 ケリー氏はそれ以降、「誤った時に誤った場所で行った誤った戦争」とイラク戦争を完全否定。ブッシュ氏とのテレビ討論では、自慢のディベート能力を駆使して、イラク戦争に踏み切ったブッシュ氏の判断ミスを攻撃し、一定の効果を上げた。

 だが、イラク“反戦”を鮮明に打ち出すことで、“打倒ブッシュ”で結束している民主党・リベラル派を勢いづかせることはできても、より広範囲の支持獲得には結び付かなかった。

 いまだに多くの米国人がテロの脅威を感じている中、同時テロ以降、大規模テロから米国を守ってきたブッシュ氏の実績と信頼度が勝ったといえる。


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