平成16年9月21日
論戦・米大統領選(1)
米大統領選挙(十一月二日投票)は、再選を目指す共和党のブッシュ大統領と、これに挑む民主党のケリー上院議員の選挙戦がヒートアップしてきた。テレビ討論での直接対決など論戦がこれからヤマ場を迎えていくのに先立ち、今年の大統領選の争点をテーマごとに取り上げ、両氏の特徴を浮き彫りにする。
(ワシントン・三笘義雄)
イラク・テロ問題
ブッシュ米大統領 「戦時の適性」を実績で強調
ケリー上院議員 単独の「誤った戦争」と断定
「テロとの戦争」のさなかに行われる今年の大統領選。対テロ・安全保障政策の“中身”もさることながら、「戦時の最高司令官」としての“適性”が有権者にとって最大の関心事だ。
これまでの選挙戦を振り返ると、ブッシュ氏が9・11同時テロ以降の対テロ戦争における“実績”を前面に打ち出してきたのに対し、ケリー氏はベトナム戦争への従軍歴をほとんど唯一のよりどころとしてきた。
ブッシュ陣営は先の共和党大会で、イラクのフセイン政権崩壊や、かつてテロリストの温床だったアフガニスタン、パキスタンなどが今日ではテロリスト一掃に尽力していることを指摘。また、リビアが大量破壊兵器開発を放棄するなど、「米国と世界はより安全になっている」と一期目の実績を訴えている。
一方、ケリー陣営は、七月末の民主党大会の大半を、ケリー氏の「ベトナムの英雄」像を演出するのに費やした。党大会後に支持率アップの効果はほとんど見られなかったが、それでも大会直後の世論調査では、ブッシュ氏が圧倒的に強かった「テロ」「イラク」などの分野で、ケリー氏がブッシュ氏を猛追する勢いを見せた。
しかし、八月に入ると、ベトナム戦争でケリー氏と同様に海軍高速艇部隊に所属した退役軍人グループが、ケリー氏の軍歴や除隊後の反戦運動を批判するテレビ広告を放映。加えて、共和党サイドは党大会で、ケリー氏の上院議員としての二十年間の安保政策を徹底的に攻撃。「サダム・フセインがクウェートに侵攻した一九九〇年に湾岸戦争に反対したのに、大統領選に有利との判断から、二〇〇二年にはイラク攻撃に賛成した」(ジュリアーニ前市長)、「過去二十年間、自由と安保にかかわる重要課題で、ケリー氏ほど誤り、弱気で、考えが揺れた人物はいなかった」(民主党のゼル・ミラー上院議員)などと批判し、「戦時の最高司令官」を目指すケリー氏の適性を完全否定した。
世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの最新の調査結果によると、両候補の分野別支持率は、「テロ」ではブッシュ氏58%に対し、ケリー氏31%。「イラク」ではブッシュ氏52%に対し、ケリー氏40%だった。「戦時の大統領」のイメージ戦では、ブッシュ陣営の“圧勝”という結果になっている。
ところで、ブッシュ、ケリー両候補は共に、テロ対策全般では、情報機関の改革、米軍の強化、国際協力の重要性――などを訴えている。だが、対テロ戦争の“最前線”であるイラク問題に関しては、大統領選の最大の焦点ということもあって、両候補はそれぞれの見解の「違い」を強調している。
ブッシュ氏は、イラクのフセイン元大統領が国際社会にとって「脅威」だったと指摘。国連などを通じての十年以上にわたる外交努力が実らず「(国際社会は)最後のチャンスを与えたが、(フセイン氏)は再び拒絶した」として、イラク攻撃の“正当性”を訴える。
さらに、ブッシュ大統領は十六日遊説先のミネソタ州で、ケリー氏の政策の“ぶれ”について「あいまいなメッセージは、前線のわが軍兵士への、イラク国民や同盟国への、とりわけ、われわれの敵に対しての誤ったメッセージとなる」と厳しい批判を展開している。
これに対しケリー氏は、イラクの不安定な治安情勢を背景に、今月に入って“反戦”トーンを強めている。「誤った時に誤った場所で行った誤った戦争」とイラク戦争を否定する発言をしたのに加え、米国が「単独」でイラク戦争に踏み切ったことで、戦費が二千億ドルに達し、国内財政を圧迫しているなどとブッシュ氏を批判している。