平成16年9月6日
米共和党全国大会を終えて(上)
先月三十日から四日間にわたり、ニューヨーク市で開催された米共和党全国大会。この大会では、ブッシュ大統領が大統領候補として党の指名を受け、これを受諾する演説が行われた。選挙戦中盤を締めくくる最大の見せ場に、ブッシュ陣営が民主党候補・ケリー上院議員に差をつけるべく取った戦略を検証する。
(ニューヨーク・内藤 毅)
父の失敗に学び中間層に照準
ブッシュ大統領「思いやりある保守」強調
今回、掲げられた共和党大会のテーマは「より安全な世界とより希望に満ちた米国」だった。これに見られるように、共和党は「テロ対策」と「思いやりのある保守主義」の二つに焦点を絞り、大統領選終盤に臨んでいる。特に、「思いやりのある保守主義」は二〇〇〇年の大統領選でも、ブッシュ大統領が掲げた公約でもある。
この「思いやりのある保守主義」とは、減税や小さい政府の確立を求め、個人や企業の自由競争をよしとする共和党の従来路線に、社会的弱者に対する社会保障や福祉政策にも重心を置くというもの。具体的には、「落ちこぼれなし」を目指した公教育改革や高齢者と低所得者に対する医療保障拡充、市民への職業訓練制度を充実させるなどが挙げられる。
二日に行った党指名受諾演説の中で、ブッシュ大統領は「私は大統領候補として、より安全かつ希望にあふれた米国をつくる明確で肯定的な計画を提示する。そのためにも、思いやりのある保守としての思想を提示する」と語り、一期目の「思いやり政策」がもたらした実績と二期目に向けた新たな公約を発表。同大統領は、この演説の実に半分の時間を割いて、「思いやり政策」とそれに関連した内政方針、国民生活向上について語っている。
ケリー上院議員が七月末の民主党全国大会で、イラク情勢などの安保問題に演説の軸足を置いたのとは対照的に、ブッシュ大統領が内政と安保問題を均等に扱ったのは、同氏が政治的勘に富んでいる上、米国民の投票傾向を熟知し、押さえるべきところを知っているとの見方がある。
今回の大統領選の特徴は、親ブッシュ・反ブッシュの二極分化にある。共和党支持者はブッシュ氏を熱狂的にサポートし、民主党支持者はブッシュ憎しで結集し、ケリー氏を強く推している。現在、有権者のうちで支持を決めかねているのは、中間・無党派層だ。
これらの層が投票判断を下す材料は外交・安保問題ではなく、自分たちの生活に直結する内政問題に対する候補の考え方である。ブッシュ氏の父、ブッシュ元大統領は、地元テレビに、九二年の大統領選でクリントン氏に敗退したのは、選挙キャンペーンで外交・安保実績に焦点を当てたためと述べ、「誓ってもいい。息子は私と同じ過ちは繰り返さない」と語っている。
さらに、ブッシュ大統領はすでに、「ケリー氏よりも国家の安全保障・テロ政策を任せられる」との定評ができている。党大会でブッシュ氏自身が「強いブッシュ」を強調する必要はない。「思いやり政策」が前面に押し出されたのは、「ブッシュ政権は一部の富裕層・大企業を優遇している」とする民主党・反ブッシュ陣営からの非難に対抗すべきだと判断したとみるべきだろう。
加えて、ブッシュ陣営の巧みなところは、共和党大会のメーンスピーカー陣に、ジュリアーニ前ニューヨーク市長やパタキ・ニューヨーク州知事、カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事など、保守・リベラル層問わず、米国民から人気の高い共和党穏健派を呼んだことだ。これらの有名弁士は口をそろえて、ケリー上院議員が「フリップ・フロッパー」(日和見主義者)と非難し、逆にブッシュ氏を米国をテロから守る強い大統領と称賛。ブッシュ氏の登壇までに、自らを「強い指導者」と主張せずともよい環境をつくり上げた。
しかし、「思いやりのある」大統領の顔はどこまで、国民に受け入れられたのか。米国では休日明けの世論調査に関心が寄せられている。