
徹底した相互監視で独裁維持フセイン政権下の治安組織−イラクイラクのフセイン大統領は一九七九年の就任以来、度重なる民衆蜂起や軍部の反乱、クーデターの企てを阻止してきた。二十三年に及ぶ長期独裁を可能にしたのは治安組織による巨大な監視の網だ。フセイン大統領は、複数の治安組織が「体制の維持」という究極の目標のために競合し、互いを見張る相互監視のシステムをつくり上げた。主要な治安組織は「特別治安局」「総合治安局」「総合情報局」「軍治安局」「軍情報局」の五つ。フセイン大統領の親族のほか、大統領出生地のあるイラク中部の部族出身者が組織幹部を独占する。任務は大統領や政権幹部の警護、反体制的言動の取り締まり、国外でのちょう報活動などで、組織間で任務の重複が少なくない。 九一年の湾岸戦争後、九八年まで続いた大量破壊兵器の国連査察では、これらの組織が査察妨害や兵器隠匿を担ったとされる。 同大統領は六○年代末の革命指導評議会(RCC)副議長時代から、自らの権限で治安組織の設置・拡大を進めてきた。目的はイラク社会の監視に加え、各組織に互いを監視させることで、特定の勢力に政権の脅威となるような力を与えないことだった。組織間での情報の共有はほとんどないとされ、政権中枢に直接吸い上げる仕組みだ。 最も重要な組織は大統領の二男クサイ氏がトップを務める特別治安局だ。米海軍大学院講師でイラク情報組織に詳しいイブラヒム・マラシ氏によれば、特別治安局は他の四つの治安組織すべてを監視下に置き、イラクの正規軍から独立した緊急展開部隊を持つ。最強の大統領警護部隊である「特別共和国防衛隊」も指揮下に置いており、正規軍やエリート軍の共和国防衛隊によるクーデターの試みは困難だ。(カイロ時事)
|