2011年3月30日
極東情勢と日本の安全保障
英国王立防衛問題研究所研究員 ジョン・ヘミングス氏に聞く(下)
露の脅威は日本より中国
国際システム重視を

――先月、ロシアは日本の北方領土に一旅団規模の防空隊を配備すると発表した。北方領土問題に日本はどう取り組むべきか。
ロシアは北方領土で防衛力を高めて、日本側に圧力を掛けようとしている。ミストラル級強襲揚陸艦、S400地対空ミサイル防衛システム、戦闘機などを配備するなどと議論されている。そうした軍事的議論がモスクワで定期的に行われているが、説得力あるものにはまだなっていないと思う。もし配備するとなると、大変なコストがかかることになる。
モスクワでは誰も北方領土で日本からの“侵攻”に備えたそうした兵力が必要だと信じていないと思う。これは日本に圧力を掛けてもっと資金を引き出すゲームだ。日本側を動かすてことして兵力を利用しようとする。例えば、配備した揚陸艦を撤去するからいくら出せ、というようにだ。
ロシアは日本を完全には失わないように注意している。ロシアは中国へのエネルギー輸出に過度に依存することに不安感を抱いている。日本に対してエネルギーを売り続けたいし、日本の国際協力銀行(JBIC)の融資や日本からの投資を保持したい。
北方領土をめぐるゲームは日本とロシア、それに中国を加えたものだ。ロシアは現在、自信を持っている。1990年代にロシアは極東地域に対する日本からの資金や投資、高度テクノロジーを必要としたためにしばしば日本側に譲歩せざるを得なかったが、今は感じ方が違う。
日本に対抗し、メドベージェフ(大統領)が北方領土に行って強いロシアを誇示し、国内での来るべき選挙でポイントを稼ごうとしている。
半面、ロシアは中国を見ながらゲームをしている。ロシアは結局のところ、日本よりも中国を恐れている。日本は忍耐し、多くは譲歩せずゲームを続けロシアと中国が不和になるのを待つことだ。今は日本にとって不利な状況だが、何年か後に中露関係が悪くなった場合には、ロシアは日本のドアをたたくだろう。
――冷戦終結以降の地政学的状況の変化を踏まえ、また最近中国の台頭が顕著となる中で、日本の安全保障は米国に依存するだけでなく、もっと自立すべきだとの考え方がある。
日本がもっと自立すべきとの議論が1990年代にあったが、それは正しい方向だったと思う。しかし現在、中国がステルス戦闘機や空母破壊対艦弾道ミサイルの開発を行っているのが明らかになっており、台頭する中国は軍事力を誇示している。これは地域での重要な戦略的事実だ。日本が自立すべきとの議論はすでに過去のものになっている。日本は米国との関係を強化して自立の程度をむしろ少なくすべきであり、また韓国やオーストラリアとの関係でもそうであるべきだ。
国連(UN)、国際通貨基金(IMF)、米国、日本、欧州連合(EU)が現行の国際システムを作っている。それぞれが別々に動き出すと、世界はもっと危険になる。
中国は現在、より保守的になり軍国主義的になっている。中国では人民解放軍の影響力が強くなり、指導者たちの力が弱くなっている。弱い指導者はより国家主義的になりがちだ。1990年代に育った子供たちが現在大人になり大学や軍のポストに就いているが、彼らは祖父母の世代よりももっと反日的だ。新たな紛争が起きる申し分ない状況がある。
われわれは危険な時代に生きている。最終的には日本は独立した普通の国になるべきだと思うが、今はその時ではない。
(聞き手=ロンドン・行天慎二)