2011年3月29日
極東情勢と日本の安全保障
英国王立防衛問題研究所研究員 ジョン・ヘミングス氏に聞く(中)
重要さ増す普天間基地
核武装は日米関係を阻害

――台湾に対する中国の主権要求は具体的であり、軍事的侵攻の選択肢も考えられる。軍事的侵攻が起きた場合に、米国は台湾を保護する義務があるので沖縄の米軍基地が決定的に重要となる。こうした背景から普天間基地問題をどう考えるか。
中国の台頭を念頭に置くべきだ。普天間基地問題はこれまで日米同盟に関する東京−沖縄間の地域的問題と見られて、地政学的問題から切り離されていた。航空機のそばに住むのは沖縄の人々にとって困難なことに違いないが、中国の軍事的台頭(特に過去2年間顕著になっているが)を考えれば、沖縄の人々も(基地の存在意義を)理解し得ると信じる。
中国が猛進するのを防止するためには、日米同盟の安定性と十分な防衛態勢を示さなければならない。そうであれば中国は猛進的行動はしないだろう。
日本は台湾と複雑な関係にある。日本は(有事の際に)台湾の軍や基地に対して兵站業務の支援を行うと聞いている。(沖縄基地問題は)かつてよりもずっと地政学的問題、中国の軍事的意図にリンクしている。
――北朝鮮が核兵器を保有していることは日本にとって大きな脅威だ。ミサイル攻撃の潜在的な恐れがある。北朝鮮に対抗するために、日本も独自の核兵器を持つべきだとの議論が起きているが、日本の核武装に関してはどう思うか。
日本の核武装論は理解できるが、多分賢明ではない。オバマ現米政権は核軍縮にコミットしている。日本は米国の核の傘の保証の下にあるが、もし日本が核兵器保有の道を取れば、米国は日本との関係が難しくなる。米国は北朝鮮への対応ができないでいるので、日本の核武装で日米関係が無効になるとは言わないが、同盟関係にとって困難な材料になるだろう。核保有によって安全保障を得ることは日米協力による安全保障の損失を招くことになる。日米が分断すれば西太平洋の安全保障がより不確定になる。
――現実的に所有するかどうかは別にして、核武装するぞという議論や姿勢が北朝鮮への安全保障上の対応で有効だとの意見もある。
確かに、(東アジア)地域では日本の核武装を可能にする流れが出ていると思う。だが、それはまだ始まったばかりだし、そうなることが望まれているわけではない。なぜなら、(日本が核武装すれば)同地域では日本ばかりか韓国や台湾も核兵器保有国になろうとするので、高度危険ゾーンになる恐れがあるからだ。そうなれば安全保障が確保されるどころか一層失われることになる。他の問題として、日本国民はいまだに核兵器を国内に持つことを快く思っていないと思う。日本防衛のための米軍の核兵器も含めてだ。議論を行うことは健全なことだが、現実はそこまで行っていない。
(聞き手=ロンドン・行天慎二)