人を愛し、敬う心を

ご夫妻の願い、名前に反映

 「人を愛し、敬う心を」。皇太子ご夫妻のお子さまのお名前には、結婚九年目で授かったわが子への願いが、儒学の教えに寄せて反映された。

 宮内庁によると、命名の出典選びに関与した学者は鎌田正東京教育大(現筑波大)名誉教授、米山寅太郎静嘉堂文庫長、秋山虔東大名誉教授の三人。ご夫妻と相談しながら、中国の古典などに当たり、@常用漢字や人名漢字の範囲内A歴代の天皇や近年の皇族と重ならない−などを条件に、三通りの女子の名前を絞り込んだ。この中から天皇陛下がご夫妻の意向を尊重し、「敬宮愛子内親王」の名前を贈った。

 儒学の四書「孟子」の一節は「人を愛する者は、他人も常にその人を愛し、人を敬う者は、他人も常にその人を敬うものである」との意味。広く人間社会で修養すべき重要な基本道徳を説いたくだりだ。

 宮内庁の羽毛田信吾次長は「ご夫妻はこういったことが、人間として生きていく上で非常に大事だと思われたのではないか」と話した。


「孟子」離婁章句下
 孟子曰(いわ)く、君子の人に異なる所以(ゆえん)の者は、其(そ)の心を存するを以(もっ)てなり。君子は仁を以て心を存し、礼を以て心を存す。仁者は人を愛し、礼有る者は人を敬す。人を愛する者は人恒に之を愛し、人を敬する者は、人恒に之を敬す。

 (大意)
 孟子の言葉。君子が常人と異なっているところは、本心を失わずに保持しているからである。君子は仁を修めて本心を保持し、礼を修めて本心を保持する。仁者は人を愛し、礼を修める者は人を敬うものである。人を愛する者は、他人も常にその人を愛し、人を敬う者は、他人も常にその人を敬うものである。

孟子とは
 孟子 中国戦国時代の儒家で、孔子の孫の子思の門人に学び、諸国を回って、性善説や仁、義を重んじ、王道政治を行うことを説いた。孟子の言論や問答を記した書が「孟子」で、四書の一つ。七編から成る。

お印は「ゴヨウツツジ」

「白い花のような純真な心に」

 今月一日に誕生され、七日に「敬宮愛子内親王」と命名されたお子さまに与えられたお印は「ゴヨウツツジ」。別名をシロヤシオといい、毎年五月、栃木県・那須御用地内にある散策路で純白の花を付ける。  宮内庁によると、皇太子ご夫妻はこの花がお好きで、敬宮さまが「純白の花のような純真な心を持った子供に育ってほしい」との願いをお印に込められたという。  お印は天皇、皇后両陛下とも相談されてご夫妻が決め、両陛下に報告する形をとられた。最近の女子皇族のお印は、敬宮さまの叔母に当たる紀宮さまが「未草」(ひつじぐさ)、いとこに当たる秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さまが「木香茨」(もっこうばら)、二女佳子さまが「ゆうな」。

世界の人々に敬愛されることを祈念
 お名前の出典選びに関与した三人のうちの一人、鎌田正東京教育大(現筑波大)名誉教授の話
 謹んで皇孫殿下の命名の儀をお祝い申し上げます。このたび、御名と御称号案勘申のご下命をいただき、身に余る光栄と存じましたが、同時にあまりの重責に身の引き締まる思いでいっぱいでございました。伝統あるわが国の皇室の新宮が新しい世紀に大きく羽ばたき、日本中の人々に、そして広く世界の人々に敬愛されることを祈念して、わたしたち三人は全力を挙げて選定案を勘申させていただきました。内親王殿下がお健やかにご生育なさることを心からお祈りいたす次第でございます。

古典の含意踏まえ意義深い命名
 吉永慎二郎秋田大助教授(中国思想史)の話
 孟子は性善説の思想家として知られるが、この場合の「性善」とは、自らの内に生まれながらに宿る道徳性に目覚め、これを保持すべきことを説いたものにほかならない。特にこの章(離婁章句下)は「仁」と「礼」の働きについて、これを常に保持し、常に目覚めている者こそ、「君子」(理想的人格者)であると述べたものだ。仁は人々には「愛」として、礼は人々に「敬」として発揮されるもので、これによって己と世界との調和をもたらすものとされる。  今回、二十一世紀の初めに誕生された皇孫殿下のお名前として、このような伝統的な古典の含意を踏まえてご命名されたことは、誠に意義深い。

(時事)


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