研究論文、英製薬会社「グラクソスミスクライン(GSK)」の影響下


予防という名の人体実験
「子宮頸がんワクチン被害」を追う(11)

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「子宮頸がんワクチン」シンポジウムでのスライド。GSK社員が深く関与している論文であることを示している= 11月24日、東京・湯島の全労連会館

 11月24日に全労連会館で開かれた「『子宮頸(けい)がん予防』ワクチンの必要性・安全性・有効性」シンポジウムでは、子宮頸がんワクチンの副反応の原因が、ワクチンに混入されている免疫増強剤(アジュバント)にあるとの指摘が発表者から相次いだ。

 これで、被接種者の免疫体系を攻撃する自己免疫疾患が引き起こされると見られるためだ。全身性エリテマトーデス(SLE)など、自己免疫疾患は治療法が確立しておらず、厚生労働省により、全国規模で研究が必要な「特定疾患」に指定されているものも少なくない。

 イスラエルの医学研究機関に携わる3人の医師は、英文医学雑誌『ループス』(2012年2月号)の誌上で、その問題を指摘した。

 「アジュバントによって引き起こされる自己免疫症候群(Autoimmune Syndrome induced by Adjuvants=ASIA)のスペクトラム」と題する論文だ。

 アルミニウム・アジュバントのような従来、安全と考えられてきた物質が、動物モデルや人間の研究から、「そのいくつかは自己免疫疾患を引き起こすことが判明した」と述べている。

 サウジアラビアの族長が、インフルエンザワクチン接種で、その12年前に治癒していたSLEに再び罹(かか)ったとし、「表に出てきているのは氷山の一角」と強調する。

 サント・トマス大学(マニラ)のソルデヴィラ氏らは、同じく『ループス』で「SLEの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種か、それともウイルス感染か」という論文を発表。子宮頸がんワクチンを接種後に自己免疫疾患を発症した17歳の少女の例を紹介している。

 同ワクチン接種の2カ月後、関節痛、両下肢の発疹などSLE特有の症状を発症。「臨床医は接種後、自己免疫疾患の可能性を知っておかなければいけない」と強調する。

 ただ、HPV16、18型に効果のある子宮頸がんワクチンに混入しているアジュバント「ASO4」をそれなりに評価しているのだ。

 このアジュバントで生じる副反応の頻度は0・5%程度で、アジュバントなしのワクチンと同様の自己免疫疾患発症率しかない、としている。

 論文全体の趣旨と細部の議論が噛(か)み合っていない。

 全労連会館シンポでの打出喜義・金沢大学附属病院産科婦人科医の講義で、そのナゾが解けた。

 英文雑誌論文の中には、その論文が依拠しているデータの大半が、英製薬会社「グラクソスミスクライン(GSK)」の資金提供を受けている人物によって作成されたものがある、というのである。

 改めて『ループス』のアジュバント「ASO4」の安全性を述べる論文が依拠したデータを調べてみた。

 すると、そのデータ作成に携わった8人全員が、ベルギーや米国にあるGSKのワクチン会社の社員だった。

 GSKでなければ、同ワクチンの「アジュバント」研究を進めるのは難しいのも事実だ。ワクチン事業を手がける巨大企業・GSKが、重要な調査データを独占し、都合のよいようにコントロールできる構造が出来上がっている。

(山本 彰)