杉並区が子宮頸がんワクチンの副反応問題で「重篤被害者なし」と嘘


予防という名の人体実験
「子宮頸がんワクチン被害」を追う(3)

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ワクチンの副反応で痙攣が起き、ベッドの上で跳ね回る少女(10月15日の「全国子宮頸癌ワクチン被害者連絡会」神奈川県支部の記者会見で上映)

 今年3月25日に発足した「全国子宮頸(けい)癌(がん)ワクチン被害者連絡会」(池田利恵事務局長、以下「連絡会」)の会長を務める松藤美香さん(46)。

 娘さんは、2011年10月に子宮頸がんワクチンを接種。その直後から酷い副反応に襲われ、痛みが手足、背中と飛び、即入院。娘の病気の正体を突き止めようと順天堂大学病院などの痛み専門の外来を訪ね、さらに千葉県の病院など10カ所近くを転々とした。

 「お子さんが副反応に苦しんでいる方は、皆さん、何とか助けようと病院を7、8カ所は回っている」(松藤さん)と言い、治療法はまだ手探り。

 娘さんが子宮頸がんワクチンの副反応を発症して以来、「みかりんのささやき」というブログを立ち上げ、症状を書き続けてきた。

 松藤さんは、娘さんに症状が出ると同時に、杉並保健所にも自分で連絡。だが今年の2月、杉並区の区議会議事録を見てびっくり。

 同区の曽根文子区議(生活ネット)が、子宮頸がんワクチンの副反応問題を区当局に質(ただ)したとき、保険担当課長は「杉並区に重篤な副反応被害者は出ていない」と答えているのを見つけたからだ。

 松藤さんは、直ちに曽根区議にコンタクト。事の真相が明らかになったのを受け今年3月7日、再質問が行われた。

 これで杉並区から重篤なワクチン副反応被害者が出ていることをまず朝日新聞が報道。続いて他紙も一斉に報じ全国に伝わった。

 同区ではその前年から中学入学お祝いワクチンと銘打って、女子中学生に無料でワクチン接種を行っていた。

 そのお膝元で、重篤副反応被害者が出たという構図が余計に事態の深刻さを示していた。国会では子宮頸がんワクチンを、それまでの任意接種から定期接種へ予防接種法改正により、事実上の強制接種にする手続きが最終段階を迎えていた。

 参議院での採決の4日前の25日、連絡会の記者会見が満堂の取材陣を前に行われ、松藤さんだけが5人の被害者の親のうち実名と顔を出して受け答えした。

 会見に臨んだある被害者のお母さんは「病院に聞いても厚生労働省に聞いても子供の痛みの原因が分からなかった。ネットで情報収集したとき、松藤さんのブログに行きつき、納得がいった」と語った。

 厚生労働省によると、09年末にワクチン導入後、この7月までに被害者数は2259人に上っている。

 松藤さんの公表に向けての強い意志とタイミング、それをバックアップする連絡会の存在。この三つが揃ったことで、同ワクチン副反応被害はメディアの関心を大きく引きつけ、全国的に広がり、この6月には積極的な勧奨を中止するという措置が取られた。

 娘さんは今、登校できるようになったが、いつ、また悪化するか分からず気を抜けない生活が続く。

 松藤さんは「このまま政府が積極的勧奨再開をするようなことがあれば、緒に就いたばかりの副反応被害者への調査・研究がウヤムヤになってしまいかねない」と危惧している。

(山本 彰)