首相年頭会見、徹底議論し「決める政治」貫け


 安倍晋三首相が年頭の記者会見を行い、24日召集予定の通常国会を「好循環実現国会」と位置付け、経済再生とデフレ脱却を最優先課題として取り組む姿勢を示した。15年ぶりとも言われる景気回復のチャンスだけに回復軌道に順調に乗せられるよう「攻め」の政策を展開してもらいたい。

 幅広い合意得た政策を

 中国の軍拡、海洋進出などわが国を取り巻く安全保障環境もますます厳しくなっている。集団的自衛権行使のための憲法解釈の見直しは待ったなしだ。国会での論戦は激しいものになろうが、与野党ともに徹底的に議論を尽くし最後は「決める政治」を貫くべきである。

 長らく衆参で多数派の異なるねじれ状態が続き、円滑な国会運営が阻まれ「決められない政治」が続いてきた。その打破を求める声が国民の間で高まり、一昨年暮れの衆院選と昨年夏の参院選で自民、公明両党が圧勝し、両党による多数派が両院で主導権を握るようになった。

 民意が選択した結果である。両党が成立させようと思えば、すべての法案を成立させることができる状態だ。決められる政治が復活したのである。そこで問われるのが、可能な限り幅広い合意を得て政策を策定していくプロセスの重要さだ。

 昨年の臨時国会では、特定秘密保護法の成立に向けて自民党は衆院でみんなの党や日本維新の会と修正合意した。しかし、参院では審議の進め方に強引さが見られ両党は採決を欠席した。この「進め方」を反省し十分議論を積み重ねる謙虚さが今後、求められる。その上で最後は決めるのが民主主義だ。

 首相の政権運営にとっての最大のヤマ場は4月以降にやってこよう。第一は、消費税率を4月に8%に引き上げることで必ず「反動減」がある。政労使が一体となって賃金を上げるなどアベノミクスを支えることが肝要だ。4、5、6の各月の需要の減少を最小限に抑え、景気の腰折れを食い止めるためには第3の矢の成長戦略が的を射なければならない。民間活力を成長にどう取り込むのか与野党のチエが求められる。

 厳しい安全保障環境に対処するには、集団的自衛権に関する憲法解釈を見直さねばならない。首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が報告書を提出するのが4月頃の見通しだ。それを受けて議論の活発化が必至だが、首相は年頭会見で「時代の変化をとらえて、(憲法の)解釈変更や改正に向けて、国民的な議論を深めていくべきだ」と積極姿勢を示した。だがこれには連立を組む公明党の反発が十分予想される。

 首相としては、まずは公明党の説得に全力を尽くす。同時に、解釈変更に前向きなみんなの党や日本維新の会との論議を深め多数派形成の“環境整備”を図るべきだ。政策により変化する「部分連合」の可能性を探ってもいいだろう。

 牽引役と強い指導力を

 要は「国益にかなう政策とは何か」を最重視してそのために合意形成を図ることだ。2年目となる安倍政権にはその牽引(けんいん)役と強い指導力が求められる。

(1月8日付社説)