新元号「令和」、誇り持って新しい御代へ


 新しい元号が「令和」に決まった。天皇陛下が新元号を定める政令に署名され公布された。皇太子殿下が新天皇に即位される5月1日に施行される。新しい御代への理想と祈りを込めた新元号の決定を喜びたい。

 出典は国書の「万葉集」

 天皇陛下の御退位に伴う改元は憲政史上初の出来事だ。元号法では、元号は皇位継承があった場合に限り改めるとなっている。施行1カ月前の公表も異例だが、国民生活への影響を考えればやむを得ぬ判断であった。

 国民の意識、時代の空気、そして実際の生活にも影響を与える元号だけに、国民の関心は極めて高かった。選定には、漢字2字から成り、国民の理想としてふさわしい良い意味を持つ、書きやすい、読みやすい、過去に元号や天皇の崩御後の「贈り名」(追号)として使用されていない、などの基準がある。

 令和に対する国民の反応は概(おおむ)ね良好である。「令」には知的、倫理的なニュアンスがあるが、「和」の方は情的な柔らかさがあり、知と情のバランスを感じさせる。この二つが相まって新しい時代を切り開いていくことができるのではないか。新鮮な響きは新時代到来を予感させる。

 安倍晋三首相は「文化を育み、自然の美しさをめでることができる平和の日々に、心からの感謝の念を抱きながら、希望に満ちあふれた新しい時代を、国民の皆さまとともに切り開いていく」と決意を表明した。

 出典は「万葉集」。巻五、梅花の歌三十二首并せて序の「初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫らす」から採られた。

 これまで中国の古典(漢籍)を出典としてきたが、今回は初めて、国書である万葉集から採られたことは画期的である。安倍首相は「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然。こうした日本の国柄を、しっかりと次の時代へと引き継いでいく」とその意義を強調した。

 万葉集を出典としたことは、国民がわが国文化への理解を深め、誇りを持つきっかけにもなるだろう。有識者懇談会メンバーで作家の林真理子氏は「万葉集ブームが起きるのではないかと思い、とてもうれしい」と語っている。

 元号はかつて中国の皇帝だけが制定する権利を持っていたが、朝鮮半島の高句麗や新羅も独自の元号を定めていた。わが国は645年の「大化」を最初の元号として制定し、令和は248番目となる。朝鮮半島ではその後、中国の元号を採用するようになり、本家の中国も清朝滅亡とともに元号も消えた。そういう中で日本だけが今も持ち続けているのは、皇室と文化の連続性を保持し得たからである。

 古くは同じ天皇の御代で複数回改元されることがあったが、明治以降一世一元となった。これによって、元号は天皇と国民がその時代の喜びも悲しみも共にする一体感をさらに深めるものとなった。

 皇位継承の準備進めよ

 新元号が発表され、天皇陛下から皇太子殿下への皇位継承の時が近づいている実感が強まってきた。粛々と準備を進め、新しい天皇を戴(いただ)いた日本の船出を世界に発信していきたい。