大阪ダブル選、「都構想」よりも市廃止を問え


 「大阪都構想」を争点に、地域政党「大阪維新の会」代表の松井一郎大阪府知事と同政調会長の吉村洋文大阪市長がともに辞任して、知事と市長の入れ替えダブル選挙に挑む。

 自民党は元府副知事の小西禎一氏を府知事候補に擁立し、維新と他の主要政党との政治対決となりつつあるが、真剣な行政改革論議を望みたい。

本質逸れる構想名

 その際、維新の掲げる「大阪都構想」という名称は、東京都に並ぶ「首都」のイメージが強く、二重行政の無駄をなくす議論の本質から逸(そ)れかねない。大阪府と大阪市、同市内の各区を、東京の「都」と23区のように府と特別区に再編するというのであれば、市の廃止で税金の無駄遣いをやめることなどを前面に打ち出して訴えるべきだ。

 維新は大阪市の現行24区を4特別区にして、権限と予算を大阪府に一元化することにより736億~976億円の節約を図れると見積もっている。ただ、その際に市職員、区職員の合理化が伴うため、労働組合をはじめ抵抗が強い。

 しかし、このような行財政改革は、本来は自民党はじめ主要政党も関心を示して取り組まなければならない課題である。そうならないのは、維新が地域政党ながら府・市の首長選、議会選で単独勝利し、さらに国政進出するほど一世を風靡(ふうび)した経緯があるためだ。

 前代表の橋下徹氏が大阪府知事選で当選した2008年は、自民・公明から民主党へと政権交代する前夜であったが、大阪で無党派化した保守層を吸収して橋下ブームが起きた。

 橋下氏が中心になって大阪維新の会を結成したのは、民主党政権時代の10年。東日本大震災と原発事故への対応で混乱を招いたことで同政権の支持率が下がった11年11月、橋下氏は府知事・市長の入れ替えダブル選挙で圧勝した。

 当時の民主、自民、公明、共産などの既存政党への政治不信を背景に「大阪都構想」のように斬新な政策を掲げたことが奏功したことは疑いない。だが、12年末の衆院選で日本維新の会を旗揚げして躍進すると、各党の警戒が高まり、大阪では野党として各党は弱者連合を組んでいる。

 15年には大阪市特別区設置住民投票が行われたが、僅差で反対が上回った。超党派の合意形成が図れないのは残念だ。今回の入れ替えダブル選挙も、公明党との「都構想」協議の決裂が引き金となった。

 また「大阪都構想」の呼称も東京への対抗心が強い大阪の住民感情を刺激したもので、郷土愛を訴えて票を集める効果は大きなものがあっただろう。ただ、清新さを打ち出して既成政党に挑戦する新党も、10年も府政・市政を担う与党として年輪を刻めば、新鮮さが失われてくるのは避けられない。

 無駄なくす公約を競え

 これを再びダブル選で乗り切ろうとする松井・吉村両首長の姿勢も問われよう。

 しかし、大阪市廃止による行政改革は大きなテーマであり、与野党は賛成か反対かではなく、二重行政の無駄をなくす選挙公約で競い合うべきだ。