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緊急事態条項、改憲で天災への抜本的備えを


 東日本大震災が発生して8年が過ぎた。次なる天災がいつやって来てもおかしくない。

 南海トラフ巨大地震や首都直下地震、発生確率が90%以上とされる宮城県沖地震など想定されている大地震は少なくない。巨大台風や豪雨禍も深刻だ。もはや小手先の対応策では国民を守れない。憲法に緊急事態条項を設け、国を挙げて危機に備えるときだ。

 震災に迅速な対応できず

 天災への備えがなければ、人災と呼ぶほかなくなる。東日本大震災がまさにそうだった。広範な地域にわたって甚大な被害が生じたにもかかわらず、当時の民主党政権は安全保障会議(国家安全保障会議の前身)を開催しなかった。

 安全保障会議は外国からの武力攻撃のみならず、災害などの「重大緊急事態」にも対処できた。開催していれば命令指揮系統を一元化し、迅速に対応することが可能だった。

 また「災害緊急事態」を布告しなかった。災害対策基本法では国の経済や公共の福祉に重大な影響を及ぼす激甚な災害が発生した場合、首相は閣議にかけて災害緊急事態の布告を発することができる。そうすれば不足している生活必需物資の配給や譲渡、引き渡しなどの緊急措置を命令でき、支援物資を迅速かつ的確に被災地に送れた。

 さらに、警察法にある「緊急事態の特別措置」を取らなかった。同法では大規模な災害や騒乱などの際に、首相は治安維持のために緊急事態の布告を出すことができる。こうしていれば、全国の警察官25万人を首相直属として動員でき、系統立った救援復興活動ができた。

 さまざまな法律に緊急事態に関する条文があるのに、なぜ機能しなかったのか。それは最高法規の憲法に緊急事態条項が存在せず、護憲を唱える政権が法律レベルで緊急事態を宣言するのを躊躇(ちゅうちょ)したからだ。このような現行憲法によって惨事を広げたと断じてよい。

 今年は統一地方選が行われる年だが、8年前もそうで、国会は特例法を制定して被災地の選挙を延期した。仮に国政選挙の最中に大震災が発生すれば、法律を制定する国会すら召集できなくなり、混迷を深めるのは必至だろう。

 憲法に緊急事態条項を設けるのは世界の常識だ。いずれの国も戦争や内乱、大規模な災害など緊急事態に対応する規定を憲法に明記する。

 成文憲法がない英国では、緊急事態に政府が平時において違憲とされる措置を取っても許される「マーシャル・ルール」を設けている。

 自民党が国会審議を目指す改憲案に緊急事態条項が盛り込まれているのは評価されてよい。この案では緊急事態を大地震などの大災害に絞り、国会が機能しない場合に政府が政令で対応するとしている。

 国会は真摯に論議を

 これは緊急事態に武力攻撃を含めておらず、国民を統制する規定がないなど疑問もある。

 だが、こうした問題点を含めて国会は緊急事態条項の在り方を真摯(しんし)に論議すべきだ。次なる天災への抜本的備えを怠ってはなるまい。