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勤労統計不正、全容解明へさらなる調査を


 厚生労働省による毎月勤労統計の不正問題で、弁護士らでつくる特別監察委員会が根本匠厚労相に調査報告書を提出した。

厚労省職員22人を処分

 勤労統計は、従業員500人以上の事業所を全て調査対象としている。だが、東京都分は2004年に約3分の1の抽出調査に切り替えていた。

 担当者からの負担軽減の要望を踏まえた措置だという。しかし調査内容を説明する年報への記載については、一部の職員の「統計委員会にかけると問題があると思った」との判断で、統計委を管轄する総務省に連絡せず、調査方法切り替えの公表を見送った。

 さらに抽出調査後、全数調査に近づけるための復元処理も行われなかった。このため、延べ約2000万人の雇用保険や労災保険などが本来の額よりも少なく給付された。

 政府が不足額を追加で支払うため、一度閣議決定した予算案を修正するという異例の事態となった。統計法に違反する状態を放置して大きな混乱を招いた厚労省の責任は極めて重い。

 報告書提出を受け、厚労相は鈴木俊彦事務次官を訓告とするなど退職者を含む職員22人を処分。自身は就任時からの給与・賞与を全額自主返納する考えを示して「組織を挙げて再発防止に取り組む」と述べた。

 ただ、現時点では全容が解明されたとは言えない。国会の閉会中審査では、監察委のヒアリングの一部を厚労省の職員が行っていたことが判明し、野党議員から調査の客観性や信頼性に対する疑問が呈された。

 監察委は隠蔽(いんぺい)の認定は見送ったが、厚労省は昨年から、東京都のデータに補正処理を実施していたにもかかわらず、その事実を公表しなかったなど疑いは残ったままだ。政府は調査を続け、納得のいく説明を行う必要がある。

 今回の問題を受け、総務省が56の基幹統計の調査手法などに関する一斉点検を行った結果、国土交通省の建設工事統計など22の統計で過大な数値の公表をはじめとする不適切な事例があったことが分かった。このうち21統計については統計法違反の疑いが排除できないという。

 国民生活に直接影響を与える事案はなかったものの、基幹統計は国の政策立案の際に参考にされるものであり、不正確であれば誤った政策が進められることにもなりかねない。

 このままでは統計への不信感が高まるばかりだ。政府は深刻に受け止め、対策を急がなければならない。

組織改革は待ったなし

 今回の問題では、厚労省内のガバナンス(組織統治)の欠如も浮き彫りとなった。担当職員が統計をめぐる不適切な対応に気付いても上司に報告する姿勢は見られず、上司も統計調査の業務内容を把握しようとしなかったという。

 監察委の樋口美雄委員長(労働政策研究・研修機構理事長)が「課長級職員、元職員は事実を知りながら漫然と従来の方法を踏襲していた」と厳しく批判したのは当然だ。行政に対する信頼を回復するためにも、厚労省の組織改革は待ったなしだと言えよう。