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北方領土交渉、成果を焦って禍根を残すな


 安倍晋三首相はモスクワでロシアのプーチン大統領と会談した。北方領土問題をめぐっては、外相、外務次官級の交渉をそれぞれ2月に行うことを確認するにとどまった。

 首脳会談では進展なし

 両首脳は昨年11月、歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速することで合意した。これを受け、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の責任者を、河野太郎、ラブロフ両外相とすることが決まった。

 だが、ロシア側に領土返還に応じようとする姿勢は見られない。ラブロフ氏は今月中旬の日露外相会談で「主権の問題は議論しない」と通告。北方四島は「第2次大戦の遺産」と述べ、大戦の結果、合法的に得たとする従来の立場を改めて表明した。

 旧ソ連は1945年8月9日、当時有効だった日ソ中立条約を破って対日参戦し、日本のポツダム宣言受諾後の8月18日から千島列島の攻撃を開始。日本が降伏文書に署名した9月2日を過ぎても攻撃は止まらず、9月5日までに北方領土を占領した。

 中立条約を守らずに相手国の領土を占領することのどこが合法的なのか。日本降伏後の攻撃続行も到底容認できない。北方領土占領を正当化することは許されない。

 一方、首相は歯舞、色丹の返還と残る2島での共同経済活動を組み合わせた「2島プラスアルファ」を視野に入れているとされている。しかし国後、択捉両島も日本固有の領土であり、ロシアに不法占拠されていることを忘れてはならない。成果を焦れば、将来に禍根を残すことになりかねない。

 首相は早ければ6月のプーチン氏の来日時に北方領土問題で大筋合意するシナリオを描いている。だが、今回の会談では具体的な進展がなく、実現は難しくなったとの指摘が出ている。

 プーチン政権の支持率は年金改革や経済低迷などで急落しているため、日本に譲歩する可能性は低いとみられている。首脳会談の直前には、モスクワで北方領土引き渡しに反対する集会が行われた。

 両首脳は会談で、北方四島での共同経済活動の早期実現に向け、共同作業を着実かつ迅速に進展させるよう関係者に指示した。しかし、こうした活動が領土返還につながるかも疑問だ。過去にも平和条約締結の環境整備として経済協力が行われたが、領土交渉はこれまで一向に進まなかった。

 プーチン政権は北方領土を極東の軍事的要衝と位置付け、国後、択捉両島に地対艦ミサイルを配備するなど軍事拠点化を進めている。プーチン氏が返還後の北方領土の米軍基地設置を懸念していることも領土交渉に影を落としている。

 4島返還への糸口つかめ

 ロシアの北方領土不法占拠を容認するような交渉結果となれば、沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、尖閣周辺で領海侵入を繰り返す中国を勢いづかせる恐れもある。

 北方領土では日本の主権が侵害されている。困難な交渉であるが、首相は4島返還への糸口をつかんでほしい。