日英首脳会談、安全保障でも連携強化を


 安倍晋三首相はロンドンでメイ英首相と会談し、英国が欧州連合(EU)離脱によって日EU経済連携協定(EPA)から外れるため、2国間協定締結も視野に新たな経済連携の構築に取り組む方針で一致した。

円滑なEU離脱を求める

 両首脳は会談後に「次の10年を見据え、戦略的パートナーシップを一層深化させる」とうたった共同声明を発表した。英国はEU離脱後のパートナーとして日本を重視している。安倍首相は会談で「合意なき離脱」を「ぜひ回避してほしい」と伝えるとともに、メイ氏のEUとの離脱合意案について「全面的に支持する」と述べた。

 もっとも、合意案が英議会で可決される見通しは立っていない。英領北アイルランド問題への配慮から、英国が離脱後もEUに実質的に部分残留する選択肢が盛り込まれたため、EUからの独立を重視する与党・保守党の強硬離脱派は猛反発。メイ内閣に閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)も一貫して反対を唱えるなど多数の支持を得るのが難しくなっている。

 とはいえ、合意なき離脱は、物流のまひなど社会・経済に大きな混乱をもたらす可能性が高い。英国に進出する約1000社の日本企業への影響も避けられないだろう。円滑な離脱に向け、メイ氏の手腕が問われる。

 共同声明では、安倍政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向け、安全保障分野での連携強化を打ち出した。英国は昨年8月、南シナ海・西沙(英語名パラセル)諸島沖に海軍揚陸艦を派遣し、一方的な現状変更を進める中国を牽制している。

 この構想に関しては、日仏外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)でも、実現に向けて日仏が海洋分野を中心に協力を進めるとの共同声明が発表された。共産党一党独裁体制を堅持し、覇権主義的な動きを強める中国に対応する上で、日本は民主主義や国際法の尊重などの価値観を共有する米国やオーストラリア、インドと共に英仏両国とも協力していく必要がある。

 日英首脳会談では北朝鮮問題でも、非核化や日本人拉致問題の早期解決に向けた連携を申し合わせた。英国は北朝鮮による制裁破りの警戒監視のため、年内の早い時期に海軍艦艇を日本に派遣する。北朝鮮にも共同で対処することが求められる。安倍首相は日英関係を「同盟とも言えるような強固な関係」と位置付けた。

中国に知財保護を促せ

 一方、安倍首相は、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)に対して英国が関心を表明していることを歓迎。両首脳は、今年6月に大阪市で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に向けて「保護主義と闘い続ける」ことを確認した。貿易摩擦を激化させる米中両国を念頭に置いたものだろう。

ただトランプ米政権の対中制裁関税発動は強引ではあるが、中国による知的財産権侵害を理由としたものであり、理解できる面もある。日英両国は自由貿易推進を目指すとともに、中国に実効性ある知財保護制度の整備を促す必要がある。