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1票の格差、立法府に「悪平等」持ち込むな


 「1票の格差」が最大1・98倍だった昨年10月の衆院選について、最高裁は「法の下の平等を定めた憲法に違反しない」との判断を示した。妥当な判決だ。

 国の統治機構は「1票の平等」のみを指標として形づくられるものではない。歴史や地域の特質を無視すれば、それこそ「悪平等」に陥りかねない。選挙制度だけでなく参院も含めて立法府の在り方を問うときだ。

「0増6減」で2倍以下に

 1票の格差を問う裁判は二つの弁護士グループが全国で16件起こしていた。いずれも安倍晋三政権の正当性を否定しようとするイデオロギー的色彩が濃く、違憲判断だけでなく選挙の無効を求めており、左翼の「裁判闘争」の一環とみられる。

 過去の訴訟では「違憲状態」とする判決があるが、最高裁は選挙制度について「高度に政治的判断が求められる」とし、国会の裁量権を尊重して選挙を無効とはしなかった。国政を混乱させない適切な判断だ。今回は、定数の「0増6減」で格差が2倍以下になったことや、新たに都道府県ごとの人口比に基づいて定数配分を決める「アダムズ方式」を2020年以降に導入することを評価し合憲とした。

 憲法は法の下の平等を定めているが、それを根拠に1票の平等だけを追及すれば、いびつな選挙制度になりかねない。例えば、全国を一つの選挙区にすれば格差はなくなる。だが、必ずしも平等とは言えない。

 かつて参院に全国区があったが、他の当選者の数倍の票を得た候補者も1議席で、取り過ぎて余った票が「死票」となり、不平等との批判を招いた。政治能力でなく、タレント候補のように知名度の高さが投票結果を左右したほか、全国組織を持つ団体推薦議員が有利なため、立法府の在り方を歪(ゆが)めた。

 こうした例で見られるように選挙制度は単に1票の平等だけで決められるものではない。海外では歴史的背景を持つ行政区画や自然境界などの地理的要素を区割りに反映する国が少なからずある。ドイツでは選出議員は実際に投票した有権者の代表とする考え方があり、州選挙区の投票数に応じて開票後に定数を配分している。

 選挙区の区割りが人口変化に応じて選挙ごとに変わったり、区市町村を分断して設けられたりすれば、政治への関心が薄れ、政治家を育てようとする意欲がそがれるとの見方もある。

 16年参院選では人口の少ない隣接2県を一つの選挙区とする合区が「鳥取・島根」「徳島・高知」で導入されたが、投票率は島根を除く3県で過去最低を記録した。それで全国知事会は参院選挙区に「都道府県枠」を設ける憲法改正案をまとめ、自民党もこれを踏襲している。

改憲で二院制改革を

 参院をめぐっては衆院の「カーボンコピー」となったり、逆に衆院と多数派が異なる「ねじれ国会」に陥ったりするなど現行の二院制に起因する問題があると指摘されている。それを改めるには改憲が必要だ。

 民主政治は国民の意見を反映させる代表性と共にリーダーシップが常に問われる。立法府に「悪平等」を持ち込む愚を犯してはならない。