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対中ODA終了、戦略的な支援に磨きを掛けよ


 安倍晋三首相は先の訪中で日本の対中政府開発援助(ODA)の終了を表明した。中国はすでに世界第2位の経済大国だ。その経済力を使って不透明な軍事拡大に走っている。ODAの意味はそもそも失われている。遅きに失したが、終了は当然だ。これを契機にODAの在り方そのものを見直したい。

援助総額は7兆円超とも

 ODAは先進国が途上国援助に取り組むもので、国際平和を構築する上で欠かせない。わが国も終戦直後、さまざまな資金援助を受けた。1952年の主権回復後も世界銀行から多額の借款援助を受け、産業基盤となるインフラ造りに集中投下した。黒部ダムで知られる富山県の黒部川第4発電所はその象徴と言ってよい。

 わが国が援助側に回ったのは54年にビルマ(現ミャンマー)との平和条約、賠償・経済協力協定に署名した時からだ。当初は先の大戦の「贖罪(しょくざい)的援助」で、主に戦地となった東南アジア地域に投入した。高度成長によって経済大国になると、日本が得た利益を世界に返すべきだとの「黒字還元論」が叫ばれ、ODAが重視された。

 中国に対しては79年に訪中した大平正芳首相(当時)が「より豊かな中国の出現がよりよき世界に繋(つな)がる」として開始し、これまで円借款や無償資金協力など総額は3兆6500億円を超えている。輸出入銀行などからの「資源ローン」を加えると7兆円以上との指摘もある。

 こうした巨額援助を使って中国は北京国際空港ビルや北京地下鉄2号線などを建設したが、日本のODAを国民に知らせようとしなかった。それどころか、中国当局はしばしば反日世論をあおって「愛国無罪」と称して日本企業をターゲットとした過激デモを擁護すらした。

 冷戦終了後の92年に作成されたODA大綱では、軍事支出や大量破壊兵器開発に転用させないとの原則を決めた。だが、中国を例外扱いしたことで禍根を残した。

 実際、中国は2010年に日本を追い越し世界第2位の経済大国となると、その経済力を使ってひたすら軍事拡大を続け、東アジアのみならず国際平和に脅威を及ぼすようになった。国内では共産党一党独裁体制の下で人権弾圧に拍車を掛けている。対中ODAが「より豊かな中国」と「よりよき世界」に繋がっているとは到底言えない。

 安倍政権は国家安全保障戦略を踏まえて15年にODA大綱を改定し、新たに開発協力大綱を定めて「戦略なきODA」から脱した。今回の対中ODA終了はその一環で、ようやく戦後日本の「贖罪的援助」に終わりを告げたと言ってよい。

 同大綱は「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値の共有や平和で安定し、安全な社会の実現のための支援を行う」とうたっている。しかし、中国は経済力と軍事力をリンケージさせ、シルクロード経済圏構想「一帯一路」で影響力を高めて世界の覇権を握ろうと動いている。

真の国際平和につなげよ

 わが国は普遍的価値を背景に真の国際平和につながる戦略的支援に力を注ぐべきである。