文科次官辞任、職員の規範意識を高めよ


 文部科学省の戸谷一夫事務次官と高橋道和初等中等教育局長が辞任した。

一連の汚職事件の責任を取るためで、組織的な天下り問題で辞任した前川喜平前次官に続き、事務方トップが2代続けて不祥事で引責辞任する異例の事態となった。

贈賄側から接待受ける

 私立大支援事業などをめぐる一連の汚職事件で、文科省は8月、弁護士などで作る調査チームを設置し、全職員を対象に服務規律を守っているかなどを調べた。

 発表された第1次報告で、戸谷氏や高橋氏ら幹部5人が贈賄側の医療コンサルタント会社元役員の谷口浩司被告(受託収賄ほう助罪、贈賄罪で起訴)側から接待を受けていたことが明らかになった。文科省は戸谷氏と高橋氏のほか、義本博司高等教育局長を減給処分とした。

 戸谷氏は文部科学審議官だった2015年10月、銀座のクラブでの飲食代やタクシー代など計6万円以上の接待を受けていた。スポーツ庁の次長だった高橋氏と義本氏も接待の場に参加していたという。

 国家公務員倫理規定は、利害関係者からの接待を禁じているほか、利害関係者でなくても社会通念上の限度を超えて接待を受けることを禁止している。

特に教育行政をつかさどる文科省の官僚には高い規範意識が求められるはずだ。戸谷氏は次官として文科行政全体を統括する立場であり、高橋氏は教育の根幹とも言える小中の義務教育政策を担ってきた。戸谷氏らの行動は自覚に欠けたものだと言わざるを得ない。

 一連の汚職事件では、前科学技術・学術政策局長の佐野太被告が受託収賄罪、前国際統括官の川端和明被告が収賄罪で起訴された。

 佐野被告は文科省による私立大学の支援事業の選定をめぐり便宜を図る見返りに、この大学を受験した自身の子供を不正に合格させてもらった。川端被告は宇宙航空研究開発機構(JAXA)出向中に、谷口被告に便宜を図った見返りに約150万円相当の接待を受けた。川端被告は戸谷氏らの接待にも関与していたという。

 今回の調査報告では、谷口被告が国家公務員と接触しているのを見聞きしたことがあると回答したのが30人以上に上った。文科省では、幹部らと谷口被告の不適切な関係が放置されていたことがうかがえる。

 一連の汚職事件で、文科省では局長級以上の幹部13人のうち2人が逮捕・起訴され、2人が引責辞任するという異常事態に陥っている。不祥事の続発にはあきれるしかない。信頼は地に落ちたと言えよう。

 文科省は次官を当面空席とし、藤原誠官房長が職務を代行する。林芳正文科相は後任の決定を急ぐ考えだが、省内の人材不足は深刻で人選は難航するおそれもある。

不祥事の再発防止徹底を

 文科省では来月、総合教育政策局の新設など組織改編が予定されている。しかし不祥事の再発防止を徹底しなければ、こうした取り組みも水泡に帰するだろう。まずは職員の規範意識を高めるべきだ。