「一誠」を以て改憲実現を


編集局長代理兼政治部長 早川一郎

 安倍晋三首相が自民党総裁選で勝利し、政権の継続が確定した。選挙中、憲法改正を最優先課題と位置付け、次の国会に自民党案を提出するスケジュールを示し覚悟を繰り返し表明してきたことを評価したい。ただ改憲への歩みは、難題が多く控えており、これからが本番だ。勝って兜(かぶと)の緒を締め、「謙虚・誠実・丁寧」な姿勢で他党の説得に当たるとともに国民への理解を深めなければならない。

 また来年11月に在職日数が歴代最長の桂太郎氏を抜くことになるが、長ければいいというものでもない。地方で善戦した石破茂氏との党内融和を図り、改憲が立党の精神である自民党の所属議員と共に結束し、3年の任期中に「戦後レジーム(体制)からの脱却」を果たしてもらいたい。

 首相が今回の選挙戦で特に強調したのは、改憲案に「自衛隊」を明記することだった。自衛隊に対する違憲論争に終止符を打ち、憲法上正当な地位を与えて日本の抑止力を強化することは理解できる。

 ただこの案が国会の意思として発議する案に決まったわけではない。今後、国会に改憲案が提示された後、憲法審査会で各党が案を持ち寄って諸テーマについて議論することになろう。その際、石破氏の9条2項削減案も切り捨てずに議論をし、国民投票にも耐え得る強固なコンセンサスを得た案を練り上げるべきである。

 中でも公明党の説得がキーとなる。改憲勢力が衆参両院で3分の2以上あるといっても、公明党の賛成がなければ発議には至れない。しかし、党内は来年の参院選を控え慎重な意見が強いのは事実だ。首相の尊敬する幕末の思想家・吉田松陰は「一誠」という真心こそが人に感動を与え心を動かすことができると語ったが、その真剣な姿勢は必要である。

 注意すべきは、閣僚・党役員人事だ。首相を支持した派閥からの押し付け人事が予想されるが、しっかりと身体検査をして起用しなければならない。反改憲のマスコミは首相が2020年5月までと改憲のスケジュールを明らかにして以降、森友・加計問題で野党と共に改憲の議論を封じてきたがそれはクリアされた。人事でつまずき政権が不安定化するのは避けなければならない。

 最後の難関は国民投票である。祖父の岸信介元首相は、戦後日本の平和と繁栄の礎となった日米安保条約の改定を実現した。その時の最大の相手は国会だったが、憲法改正は国会のみならず国民の過半数の賛成を得なければ実現できない。統一地方選、天皇陛下退位、参院選、消費増税など過密な政治スケジュールの中での挑戦となるが、それを克服する必要がある。

 首相の掲げた「美しい国」へ向かうためには、日露平和条約の締結、北朝鮮による日本人拉致問題の解決、人口減少などの課題も乗り越えなければならない。改憲を含めた内外諸難題に全力で立ち向かうべきである。