沖縄知事選告示、普天間基地の早期返還実現を


 翁長雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選挙がきょう告示される。出馬表明しているのは、自民、公明、維新、希望の各党が推薦する佐喜真淳前宜野湾市長と、共産、社民、立憲民主、国民民主、自由など「オール沖縄」が擁立した玉城デニー自由党幹事長で、事実上、保革一騎打ちの決戦となる。

 危険除去訴える佐喜真氏

 玉城氏は、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対し、翁長県政を支えた「オール沖縄」勢力からの要請を受け入れて出馬表明した。知事選告示前には、知事不在という状況の中にもかかわらず、謝花喜一郎副知事が前知事の辺野古沿岸の公有水面埋め立て承認を撤回した。改めて辺野古問題をめぐる争点をつくって選挙に挑む構えだ。

 佐喜真氏は普天間基地を有する宜野湾市で市政を担い、市街地に近接する基地の危険性除去のため早期返還の実現を訴えているほか、沖縄県の県民所得向上など本土との経済格差の縮小を目指している。その際、返還実現後の跡地開発に国際的な医療福祉先端施設を構想するなど振興策を示している。

 沖縄の格差問題は複雑な経緯がある。第2次世界大戦で日米地上戦の戦場となった沖縄は、原爆が投下された広島、長崎と共に国内で反戦運動の拠点となってきた。戦後間もなく東西冷戦に入ると、当時のソ連など共産主義国を支持する国内政党の共産党や社会党、その他の左翼政治団体と結び付いた反戦反米反安保を標榜(ひょうぼう)する運動が、日本復帰後の沖縄県を覆ってきた。

しかし、激しいイデオロギー闘争の陰で沖縄県の後れは、依然解消されていない。平均県民所得は全国最下位であり、所得の低さが貧困率を押し上げ全国平均の18・3%を大きく上回る34・8%に達している。

 このため沖縄県は子供の貧困率、働いても最低生活費に満たないワーキングプアの割合、非正規雇用率など、どれをとっても全国ワースト1位で、県民が苦しい経済事情にあることは歴然としている。

 このため、両氏とも沖縄振興策を掲げているが、経済格差は厳しい県財政を反映したものだ。財源について政権与党の推薦も受ける佐喜真氏は政府との交渉で捻出すると表明している。

 一方の玉城氏は、翁長県政と同様に政府と強く対決し、普天間基地の辺野古移設阻止を掲げるなど政府批判と安全保障の争点で集票を狙っており、振興策の実現力をめぐっても有権者の判断が注目されている。

 ただ、普天間基地返還は1996年の日米合意から22年経過した。速やかに返還を実現すべきであろう。2009年衆院選で政権に就いた当時の民主党の鳩山由紀夫内閣は、辺野古移設を白紙化して再検討したが、結局、辺野古案に戻った。玉城氏も同選挙で民主党から当選しており、周知のはずだ。

「オール沖縄」への審判も

 また、玉城氏を推す「オール沖縄」の実態は、共産党が主導する野党共闘に重なる勢力だ。民主党から分かれた立憲民主、国民民主、自由各党が加わり、再び辺野古移設反対に固執するなど、民主党政権時代からの政治姿勢も選挙で問われよう。