文科省汚職、極めて深刻な規範意識の低さ


 文部科学省で汚職事件が相次いだ。教育行政への信頼を大きく揺るがした責任は重い。

幹部2人が逮捕される

 文科省では前局長の佐野太被告が、東京医科大から私立大学の支援事業の選定をめぐり便宜を図るよう依頼され、その見返りに同大を受験した自身の子供を不正に合格させてもらったとして、受託収賄の疑いで逮捕・起訴された。

 さらに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)出向中に医療コンサルタント会社に便宜を図った見返りに約140万円相当の接待を受けたとして、前国際統括官の川端和明容疑者が収賄容疑で逮捕された。

 教育行政をつかさどる文科省の幹部が不当な利益を得ていたのだから言語道断だ。事件の全容解明が求められる。

 佐野被告は金品を受け取ったわけではないが、賄賂は金品以外でも「人の需要や欲望を満たす不当な利益」とされている。東京地検特捜部は「息子の大学入試合格」を賄賂と認定した。

 入試を監督する立場の文科省の幹部が、入試の公平性をゆがめたことは罪深い。受託収賄罪は、賄賂を受け取った際、何らかの職務行為の依頼を受けていた場合に成立するもので、単に賄賂を受け取った場合の収賄罪よりも重い。

 私大への助成金は学生数などに応じて支給される「一般補助」が減り、研究内容などによって配分する「特別補助」の比重が高まっている。補助金を獲得するには書類作成のノウハウが必要とされ、佐野被告は東京医科大に申請書の書き方を指導していた。

 佐野被告は起訴内容を否認しているが、贈賄罪で在宅起訴された東京医科大前理事長の臼井正彦被告と前学長の鈴木衛被告は認めているという。

 文科省では昨年1月、国家公務員法に反して組織ぐるみで元局長の天下りをあっせんしていた事実が判明。前川喜平前次官ら7人が停職や減給の処分を受け、最終的に処分を受けた幹部らは43人に達した。

 東京医科大に便宜を図るよう依頼されたとされる昨年5月、佐野被告は官房長として文科省の再建に奔走していた。この時期に不正に手を染めていたのであれば、国民への背信だと言うしかない。

 一方、川端容疑者はJAXAの理事だった2015年8月から17年3月までの間、贈賄容疑で再逮捕されたコンサル会社の元役員・谷口浩司被告(受託収賄ほう助罪で起訴)から、東京都内の飲食店などで繰り返し接待を受けていた。東京医科大の講演会に宇宙飛行士の講師を派遣する件で便宜を図った見返りだとされている。

 谷口被告は佐野被告と臼井被告の会食をセットしたなどとして起訴された。佐野被告も谷口被告から接待を受けていた。

強い危機意識持ち改革を

 文科省の規範意識の低さは極めて深刻だ。他省庁では過去に業者との付き合いに関して厳しく批判されたケースがあるが、文科省はこうした経験に乏しいので緩みがあるとの見方も出ている。

 文科省は強い危機意識を持って改革に当たるべきだ。