国民投票年齢の自動的な引き下げは疑問だ


 自民党と公明党は憲法改正のための国民投票の投票年齢について4年間は「20歳以上」に据え置き、その後は自動的に「18歳以上」とすることで合意した。大いに疑問だ。

 国民投票と関わる成人年齢について内閣府の世論調査では多数が引き下げに反対している。4年間といった期間を設けずに論議が煮詰まるまで20歳以上とするのが筋だ。投票年齢を改憲論議の足枷にすべきでない。

「18歳成人」に反対多数

 現行の憲法改正手続法(国民投票法)は「投票年齢は満18歳以上」と定めている。しかし、その一方で付則において選挙の投票年齢や成人年齢を18歳とする「必要な措置」を講ずるとし、それまでの間は20歳以上としている。

 だが、成人年齢などを18歳に引き下げる論議が一向に進まず、必要な措置は講じられていない。それで国民投票法の改正が求められてきた。

 これに対して自民党は11月に成人年齢などを18歳に引き下げるまでの間、投票年齢を20歳以上とする改正案をまとめた。ところが、公明党が引き下げ時期を明記するよう要求し、実務者協議で自民党が譲歩して4年間は20歳以上、その後は自動的に18歳以上とすることにした。

 両党は合意に基づく国民投票法改正案を来年1月召集の通常国会に提出し成立させることを目指す。しかし、不可解きわまりない合意だ。

 成人年齢をめぐる論議が多岐にわたっているにも関わらず、それを差し置いて5年後に一方的に18歳以上とするのはあまりにも乱暴な話だ。

 内閣府がこのほど発表した成人年齢に関する世論調査では、「18歳成人」に約70%が反対している。親の同意がなくても高額商品の購入契約ができる年齢を18歳以上とすることには約80%が反対しており、18歳成人の賛成派は少数だ。

 成人年齢に関する法律は民法や公職選挙法のみならず、少年法や飲酒、喫煙の禁止法のほか、銃刀法や競馬法(馬券購入)など約190件にも上る。いずれも年齢引き下げにはさまざまな影響が懸念されている。

 例えば、18歳から飲酒や喫煙を認めれば精神・肉体的な悪影響があるとの指摘がある。昨年の内閣府の世論調査では、飲酒や喫煙の年齢制限を20歳とする現行法を支持する人が8割を占めた。性風俗分野の低年齢化では有害情報による被害拡大が危惧されている。

 一方、両党の実務者協議では、国民投票において公務員の地位などを利用して投票働きかけを行うことへの罰則について「地位利用の線引きが曖昧」として見送ることでも合意したという。

 これも納得しがたい。これでは教職員が学校で生徒や保護者などに憲法改正の賛否を主張したり、公務員が取引のある業者に投票を促したりする行為を放置し、公務員労組のやりたい放題となりかねない。

自民は改憲へ環境整えよ

 安易な妥協によって国の仕組みや社会の在り様が歪(ゆが)められれば、元も子もない。自民党は憲法改正への環境づくりに毅然(きぜん)として取り組むべきだ。

(12月22日付社説)