日中関係、積み残された課題に向き合え


 安倍晋三首相は、公賓として初来日した中国の李克強首相と会談し、首脳の相互往来の重要性を確認。安倍首相の年内訪中へ調整することで一致した。

 このことは評価できるが、日中間には沖縄県・尖閣諸島問題など多くの課題が積み残されている。真の友好につながるか疑問だ。

中国首相7年ぶりの来日

 中国首相の来日は2011年以来7年ぶり。安倍首相は会談冒頭、今年が日中平和友好条約締結40周年の節目に当たることに触れ、「全面的な関係改善を進め、日中関係を新たな段階へ押し上げたい」と表明。「私の年内の訪中、(中国の)習近平国家主席の訪日、着実にハイレベル往来を積み重ねたい」と伝えた。

 会談では、東シナ海での自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を回避するための「海空連絡メカニズム」の運用開始で合意した。しかし尖閣をめぐる対立から、尖閣を対象範囲とするかどうかは明示しないことで決着。これでは実効性を確保できるか疑問符が付く。

 中国は尖閣の領有権を不当に主張し、尖閣周辺では中国公船が領海侵入を繰り返している。今年1月には尖閣周辺の接続水域に中国海軍の潜水艦とフリゲート艦が進入するなど、尖閣奪取に向け圧力を強化している。中国が尖閣を日本固有の領土と認めない限り、関係改善には程遠いと言わざるを得ない。

 このほか、中国は東シナ海の日中中間線付近でガス田を一方的に開発している。この問題をめぐって、日中両政府は08年に①ガス田「白樺」(中国名・春暁)への日本による出資②「翌檜」(同・龍井)の南側海域の共同開発――の2点で合意。だが、10年に尖閣沖で発生した中国漁船領海侵犯事件で交渉は中断した。中国は開発を中止し、交渉のテーブルに着くべきだ。日本も強く促す必要がある。

 安倍首相が中国との関係改善に力を入れる背景には、学校法人「森友学園」「加計学園」問題など相次ぐ不祥事で低下した支持率を回復させる狙いもあろう。しかし、日中間の懸案から目を背けて協調ムードを演出しても日本のためにはなるまい。

 両首脳は、中国が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」をめぐる協力についても意見交換。新たに設置する官民フォーラムは、日中の民間企業が第三国における協力の在り方を議論する。

 だが中国はインフラ整備などによって、国境問題で対立するインドの周辺諸国に影響力を拡大している。パキスタンやスリランカでは道路や港湾の整備を進め、海洋進出の拠点としている。一帯一路に協力すれば、中国の覇権主義的な動きを一層強めることにならないか。

インド太平洋戦略推進を

 中国は南シナ海でも、16年の仲裁裁判所判決を無視して軍事拠点化を進めている。国際秩序を揺るがす動きであり、決して容認できない。安倍首相は中国に、国際ルールを守り、地域の安定に努めるよう強く求めるべきだ。航行の自由や法の支配などの価値観を浸透させる「インド太平洋戦略」の推進に向け、米国やオーストラリア、インドとの連携も強める必要がある。