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民間防衛論議、国民保護法を抜本的に見直せ


 わが国を取り巻く安全保障環境の激変を受け、国土・国民をどう守るのか、防衛の在り方が問われている。

 それにもかかわらず、国民自らはどう身を守るのか、いわゆる「民間防衛」に関する論議が欠落している。これは看過できない課題だ。

協力に応じる義務なし

 わが国では2004年に国民保護法が制定された。同法は武力侵攻やミサイル攻撃、大規模テロなどがあった場合、国や自治体がどう対応するか、決まりや手順を定めている。

 例えば、ミサイル発射があった場合、情報を全国瞬時警報システム(Jアラート)で市町村に伝達し、市町村は防災無線などを通じて全住民に知らせて避難させる。ミサイルは数分から10分で飛来するので、情報伝達と避難は一刻を争う。

 ところが、ミサイル攻撃を想定した避難訓練を行った市町村は全体の1割にも満たない(今年2月現在)。全国で約9万カ所の避難施設が指定されているが、コンクリート造りは6割弱、地下施設に至ってはわずか0・7%にとどまる。これでは有事に混乱が生じるのは必至だ。

 ミサイルにはNBC(核・生物・化学)兵器が搭載される可能性もある。だが、核シェルターは存在せず、代用となる地下施設も皆無に等しい。避難施設の設置を地方任せにせず、国費の投入を考慮すべきだ。

 国民には避難への協力などに応じる義務がない。国民保護法は「協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努める」(4条)とするだけだ。しかも、協力は国民の自発的な意思に委ね、「要請に当たって強制してはならない」(同2項)とわざわざ断っている。これで国民保護態勢が機能するのか疑問だ。行き過ぎた人権配慮の風潮から脱皮しなければならない。

 武力攻撃などを受けた際、避難や消火に大きな役割を果たすのは消防だ。消防は「国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護するとともに、武力攻撃災害を防除し、軽減しなければならない」(97条7項)と規定されている。

 この任務は、本来は国がなすべき仕事を地方自治体が行うとする法定受託事務としている。消防は消防職員16万人と消防団員85万人の約100万人から成る。このうち消防団員は非常勤の特別職地方公務員で、実際は民間ボランティアに近い。

 国民保護法は安全確保配慮義務を定めているが、危険を顧みず行動する勇敢な消防職員・団員は少なくないはずだ。スムーズに対応するためには有事に国家公務員とする措置が必要との指摘もある。

 消防とともに自主防災組織の役割も大きい。国民保護法は国と自治体に自主防災組織への支援を促すが、取り組みは遅々として進んでいない。自主防災組織に民間防衛の機能を付与するのは海外では常識だ。

「戦時体制」は的外れ

 こうした論議に、左翼メディアや一部野党は「戦時体制」といったレッテルを貼るかもしれない。

 しかし、それは的外れな批判だ。国民保護態勢の抜本的見直しを進めたい。