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「昇進おめでとう」赤旗拡大作戦


 加古川市の井上津奈夫氏は平成22年6月に共産党議員になった。同じ党内には岸本建樹氏、高木英里氏がいた。そして、職員の昇進が発表される3月下旬から4月初めの間に、集中的に機関紙拡大を行ってきたという。当時を振り返って井上氏が語る。

井上津奈夫氏

署名・捺印が勝手になされたことに憤慨して離党を決意した井上津奈夫加古川市議

 「職員の昇進が発表されて、次の新しいポストの席に移動する間が勝負でした。この時期が一年のうちでもっとも『赤旗』拡大に力が入る時です。私と岸本氏、高木さんの3人が揃って昇進が決まった職員さんの席を訪ねて、『昇進おめでとうございます!』とお祝いの言葉を述べます。議員3人から祝福されたら、たとえ相手が共産党であろうと悪い気はしない。『俺も、議員から祝福されるような立場にようやくなったのか』と嬉しい気分でいる、その瞬間を逃さず『幹部になられるのですから、職務上「赤旗」も読んでください』と畳み掛ける。最初は『赤旗』日曜版。また部長昇進の際は『赤旗』日刊紙に切り替えてくれるよう頼みます。一度、購読してくれた職員さんはよほどのことがない限り、退職されるまで読者でいてくれます」

 「昇進おめでとう」作戦の対象は、係長級、副課長級、部長級などで毎年100人ほどに上る。うち半数近くはすでに購読者。残りの約50人の職員に、3人で3日間かけて取り組み、30人以上が購読を了承してくれたという。党所属議員となって最初の2年間は、岸本市議に負けない実績を上げた井上氏。

 しかし、強引な拡大手法に嫌気がさして3年目は一日だけ付き合い、4年目には一日も参加しなかったのである。

 井上氏は、ほかの議員と一緒に行う「赤旗」拡大が共産党議員としては重要な仕事とは分かったが、職員の業務を止めてまで勧誘する行為は、職員に職務専念義務違反をさせることになる。

 また、市長の許可なく物販を勧誘・販売するのは庁舎管理規定に反する行為ではないか。井上氏は次第に葛藤を深めていった。さらに、共産党市議の高木氏は「赤旗」集金がずさんでトラブルを引き起こすことも。井上氏がこんなエピソードを披露する。

 「ある時、高木さんが日刊紙の購読者である部長にアポなしで行って一万円を超える集金を迫り、部長が『今、手元にありません。できれば毎月、集金に来てくれませんか』と話したら、『じゃ、いいです』とプイと出て行ってしまったことがあるのです。その後の部長会で、『あの高木市議の態度はなんや。自分で購読を頼んでおいて!』と問題になり、12人の日刊紙読者の部長のうち、11人が止めてしまったのです」

 井上氏は平成27年7月に、党市議団のアンケートに覚えのない署名・捺印が勝手になされたことに憤慨して離党を決意。党は井上氏を除籍処分とした。

 「共産党を辞めた私のところに、『赤旗の日曜版を止めていいですか?』と数人の職員さんから相談があったので、『止めて構いませんよ』と言いました。その人たちが各課に戻って『止めてもいいらしいよ』と言ったのでしょうね。その後の2年半で『赤旗』部数が半減しています」

(「しんぶん赤旗」問題取材班)