自民党大会、改憲へ党員一丸の態勢作りを


 自民党は党大会で、憲法改正実現を目指す運動方針を採択した。安倍晋三首相(党総裁)は改憲4項目の条文案がまとめられたことを報告し、「結党以来の課題である改憲に取り組むときが来た」と決意を披歴した。発議に向けてたたき台を提示したのは前進だ。

4項目の条文案まとめる

 だが、自衛隊明記については複数案を示し、曖昧さを残す。連立を組む公明党への「配慮」から本来の改憲趣旨が歪(ゆが)められているとの指摘もある。「森友問題」の影響で安倍内閣の支持率が低下しており、党が一丸となって改憲にどう取り組むか。態勢立て直しが迫られている。

 自民党は1955年11月に結党された。それまで保守政党は離合集散を繰り返し、同年2月の総選挙で左派勢力が改憲を阻止できる3分の1以上の議席を獲得。「このままでは永久に改憲できない」(当時の有力政治家、三木武吉)との危機感から保守合同に至った。

 だから自民党は「改憲のための政党」と言っても過言ではない。「党の使命」では「現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備を強力に実行」するとしている。「独立体制の整備」には、どの国の憲法にもある緊急事態条項の創設や、戦力不保持や交戦権否認を定める9条の改正が不可欠だ。それが長年の自民党のコンセンサスだ。とりわけ今日の国際情勢の変化に対応するには9条改正が急務だ。

 自民党は党内論議を重ねて2012年に改憲草案を示した。9条1項の「国権の発動としての戦争の放棄」は残し、2項を改め「(戦争放棄は)自衛権の発動を妨げない」とし、内閣総理大臣を最高指揮官とする「国防軍の保持」と「国防軍が法律の定める国会の承認その他の統制に服する」といった条項を設けるなどした。国際法に準拠する常識的な内容だ。

 それが発議に向けて揺れた。安倍首相が9条を残したまま自衛隊を明記する「加憲」を表明したからだ。草案は理想だが、発議には公明党への「配慮」が必要とした。だが、これには疑問が噴出した。

 当初、緊急事態条項には国会議員の任期延長を認める特例だけを盛り込み、政府への権限集中など肝心の緊急事態への対応を含めなかった。自衛隊明記では「必要最小限度の実力組織」との表現を盛り込み、国際法にない縛りをはめようとした。いずれも「人権」「平和」に固執する公明党への「配慮」からで、是正されたのは当然だ。

 こうした経緯から自民党の党組織の脆弱(ぜいじゃく)性が浮き上がる。党支部は議員個人の後援会の色彩が強く、「党の公認さえあれば、当選する」との安易な風潮がある。公明党の支援を期待して改憲など対立しがちな政策に口を閉ざしがちだ。

原点に立ち返って運動を

 党員数は14年から120万人を目標とするが、17年は106万余人にとどまった。党員が「改憲が歴史的使命」(安倍首相)との共通認識があるかも心もとない。党員が理論武装し、国民投票を見据えて啓蒙(けいもう)に全力を挙げる。そうでないと改憲は困難だ。自民党は原点に立ち返って改憲運動に取り組むべきだ。